昨日21日の市議会経済文教委員会で、教育委員会は、H26年入学後間もない5月に発覚した小学校1年生のいじめ事案について、いじめ防止対策推進法に規定する「重大事態」とし、市教委の下に「第三者委員会」を設置し、いじめの事実の全容解明といじめ事案の再発防止策について調査・検証を行う方針を明らかにしました。
市教委が、いじめ事案に関し法に定める「重大事態」と位置づけ調査するのは初めてとなります。
被害児童は既に転校(転校を選択せざるをえなかった)しています。
経済文教委員会の委員長として、事態を極めて重く受け止め、第三者委員会による調査・検証が、被害児童・保護者にしっかり寄り添い、公正・公平・適切、真摯に行われることを強く要望するとともに、市教委として学校現場に対し、いじめの未然防止・早期発見、いじめ防止対策推進法に基づくいじめ事案への適切・迅速な対応の徹底を図ることを強く求めました。
いじめに係る「重大事態」とは?
いじめ防止対策推進法の28条の規定によるもので、「いじめにより生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑い」や「相当の期間(年間30日を目安)、学校を欠席することを余儀なくされている疑い」があると認めた時には、「速やかに、学校の設置者または学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により当該重大事態に係る事実関係を明確にするための調査を行う」ことを義務付けています。
文科省の『いじめの防止等のための基本方針』では、『児童生徒や保護者から、いじめにより重大な被害が生じたという申し立があったときは、その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査等にあたる。児童生徒または保護者からの申立ては、学校が把握していない極めて重要な情報である可能性があることから、調査をしないまま、いじめの重大事態ではないと断言できないことに留意する』ことを強調しています(国会での法制定にあたっての附帯決議に基づくもの)。
市教委では、文科省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(H29年3月)に基づき、被害児童保護者の了解を得つつ、早期に「第三者委員会」を立ち上げるとしています。
「第三者委員会」とは?
「第三者委員会」は、弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家であるスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー等の専門的知識・経験を有する者で、当該いじめ事案の関係者と人間関係や利害関係のない第三者で構成されます(文科省『いじめの防止等のための基本的な方針』)。
長野市の『いじめ防止等のための基本的な方針』によれば、「長野市いじめ問題調査・解決チーム」が調査組織を兼ねるとし、第三者で構成し、公平性・中立性・客観性を確保するとしています。
遅きに失した感は否めず…
今年3月に、被害児童の保護者から、「重大事態」として対処するよう求める要望書が市教委に提出されたことを受け、市教委では、学校を調査主体とした再確認を指示し再調査に乗り出していましたが、いじめにかかる事実認定がはかどらない中、5月に当該保護者から、損害賠償及び慰謝料を請求する旨の通知書が届く事態に…。
市教委として、民事訴訟が想定される事態と受け止め対応方を検討する中、文科省の「民事訴訟といじめ防止対策推進法による調査は別のものである」との見解を踏まえ、当該いじめ事案が「重大事態である」と判断し「第三者委員会」による調査を行うことにしたとします。
市教委の説明では、事案発生当時、既にいじめ防止対策推進法が施行されており、学校として、「欠席日数が30日を経過した時点」「保護者から心身に重大な被害が生じたという訴えがあった時点」「保護者から重大事態に至ったとする申し立てがあった時点」など、それぞれの局面で重大事態として対応を開始する機はあったとする一方で、「関係児童が入学間もない1年生であることから、関係者の和解を図り、被害を受けたとされる児童の学校復帰に向けた取り組みに注力し、重大事態として対応することを躊躇せざるを得なかった」とします。
いじめ事案の発生から既に3年間が経過しています。被害児童の精神的・肉体的苦痛、保護者の切羽詰まった心情を察するに、遅きに失した感は否めません。
被害児童・保護者の苦痛・心情に寄り添い真摯な調査を願う
しかしながら、ようやく、法の趣旨に沿って第三者委員会による調査が始まることになります。時間の経過から事実の全容解明には多くの困難が想定されますが、被害児童・保護者の申立て、心情に寄り添った、公正・公平で真摯な調査が行われることを願うものです。
各学校の「いじめ防止基本方針」「いじめ対策組織」の再チェックを
いじめ防止対策推進法では、「いじめ防止のために学校が実施すべき施策」として、「いじめ防止基本方針」を策定し(法13条)、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、複数の教職員、心理・福祉等の専門家等により構成される「組織」を置く(法22条)ものと規定されています。
市内のすべての小中学校で、「基本方針」や「組織」は形式的には整えられているようです。しかし、問題は、いじめ防止対策推進法で定義される「いじめ」が明らかとなった段階で、実効的に機能するのかということです。
*「いじめ」の定義=いじめ防止対策推進法第2条より
「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的または物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」
重大ないじめ被害では、学校の隠蔽的な体質が明らかになっています。今回のいじめ事案でも「重大事態への躊躇」が指摘されています。
担任教師はもとより、学校運営の責任者である学校長の研ぎ澄まされた人権感覚が問われています。
学校の「いじめ防止基本方針」「いじめ対策組織」が日常的にかつ迅速・確実に機能するよう、研修の徹底をはじめ、市教委の学校に対する強い再指導を求めました。
今を生きる子どもたちの人権が、未来を生きる子どもたちの人権が、子どもたちの学びと育ちを支える学校教育の現場で損なわれることがあってはなりません。絶対に!
【付記】
今回のいじめ事案に係る対処の市教委からの説明は、被害児童をもとより加害児童の人権・プライバシーも尊重し、個人の特定につながらないことに厳重に留意しながら報告・説明が行われました。私自身としては、少なからず、当該いじめ事案の詳細を把握していますが、事実認定等が第三者委員会で行われることから、市議会委員会における市教委からの説明の範囲にとどめて、このブログページをまとめました。ご理解ください。