3月議会定例会の最終日、「オスプレイの低空飛行訓練の中止を求める請願」を不採択すべきとした総務委員会委員長報告に反対討論を行いました。
欠陥機であるオスプレイを沖縄の空はもちろん、長野上空ををはじめ全国の空を飛ばせてはならないとの想いで行った討論です。
沖縄の基地負担軽減の問題や日米軍事同盟の強化の問題もありますが、機体の安全性に限っての討論としました。
住民の生命を守る!この一点です。
請願第5号「オスプレイの低空飛行訓練の中止を求める請願」を不採択すべきものとした総務委員会委員長報告に反対の立場で討論します。
なお、討論は、オスプレイの機体の安全性という根本的な問題に限定し行います。
3月6日から17日にわたり、群馬県相馬原演習場、新潟県関山演習場をつなぐ形で実施された日米共同訓練において、3月9日、13日、15日、16日、17日の5日間にわたり、訓練に投入された米軍新型輸送機MV22オスプレイが長野県上空、長野市上空を我が物顔で飛行訓練を実施しました。
県下東北信地域を千曲川流域に沿って市街地上空を縦断する低空飛行訓練です。「フォレスト・ライト」と呼ばれた共同訓練では、陸自部隊約300人、米海兵隊部隊約450人が参加。実弾を使った射撃や第一線での救援、ヘリコプターで兵士を輸送する「ヘリボン攻撃」などの実践訓練が実施されました。県内の飛行は基地間移動を名目にした軍事訓練と思われます。
16日、17日のオスプレイ2機編隊による飛行は、陸上自衛隊ですら把握されておらず、米軍独自の運用として強行されています。オスプレイを投入する共同訓練は東富士演習場で16日から21日までの間で継続されていますが、昨日、諏訪地方で目撃されたオスプレイは、東富士演習場を中心とした訓練の一環と推察されます。
これだけ大規模なオスプレイの飛行訓練が行われたのは、沖縄を除き、本土では初めてです。
しかも、長野県、県市長会、県町村会など県3団体による、いわば県を挙げて、オスプレイの飛行訓練には安全性に関し不安が払しょくされていないとし、再三の訓練の事前情報開示を要請してきましたが、この要請は一顧だにされることなく訓練は強行されました。
しかし、これが米軍の本質であり、米軍に追随する日本政府の姿勢です。許しがたい暴挙と言わなければなりません。
請願は、オスプレイの低空飛行訓練の中止を求めるものです。
何故、中止なのか。それはオスプレイという新型輸送機が欠陥機であり、機体の安全性が確立されていないからです。絶えず、墜落の危険と隣り合わせとなる欠陥機の飛行訓練は、県民、市民の生命・財産の安全を危機に陥れるからです。墜落事故から逃れられないからです。
それでは、何故、欠陥機なのか。
開発段階から墜落事故を繰り返し、実戦配備後も相次ぐ墜落事故で、既に40名の米兵が犠牲となっています。米国内では「未亡人製造機」「空飛ぶ棺桶」と揶揄される所以です。
米軍のCH46へりの老朽化に伴い開発されたオスプレイは、垂直離着陸できるヘリコプターと、ヘリ以上の速度と飛行距離を保持できる固定翼機の長所を併せ持つ輸送機とされていますが、プロペラの大きさの割に図体が大きく重い(17トン)が故に揚力が不足していること、プロペラは約15メートル間隔で二つあることから、左右のバランスをとることが難しいこと、通常のヘリコプターが保持しているオートローテーション機能(エンジン停止の場合にローターを回転させて揚力を得て安全に着陸できる機能)がないこと、そして、エンジンからの排熱、騒音、低周波が極めて大きいことが、構造的な欠陥と指摘されています。
防災訓練に投入されたオスプレイが着陸時にエンジンからの排熱で火災を起こしたことも周知の事実となっています。災害派遣にも有効に活用できない輸送機であることを付け加えておきたいと思います。
MV22オスプレイの事故率は、10万飛行時間当たり3.69で、米海兵隊所属航空機の平均事故率2.45を大きく上回ります。沖縄普天間基地に配備される段階で、防衛省はMV22の事故率は1.93だから安全だと強調し、飛行時間に比例して事故率は減少すると説明してきましたが、全くのウソであることがすでに判明しています。
横田基地に配備されるCV22オスプレイの事故率は防衛省発表で7.21です。海兵隊のMV22の事故率よりはるかに高いCV22が東北信地域、ホテルエリアで夜間低空飛行訓練を行うことになるのです。
2015年5月にハワイ・オアフ島の空軍基地で発生したオスプレイの重大事故、2名が死亡している事故では、米海兵隊が発表した事故原因に関するメモで「パイロットはいかなる規則、飛行手順にも違反しなかった。ローターによる下降気流が増え、埃や砂を吸い込んだ結果、左エンジンの揚力を失い、着陸失敗に至った」とされています。CH46へりの4倍の下降気流を発生させる構造的な欠陥による事故と言わなければなりません。
そして、恐れていたことが現実のものになりました。昨年12月、沖縄県名護市東岸沖で発生したMV22オスプレイの墜落事故です。さらに同日夜、別のオスプレイが普天間飛行場に胴体着陸する事故が発生、深刻な重大事故が重なりました。
この重大事故の原因究明がろくになされないまま、飛行訓練が再開され、長野県上空でも飛行訓練が行われているのです。
国内で初めてとなるオスプレイの墜落事故は、政府や米国が強調してきたオスプレイの機体の安全性を根底から覆すものに他なりません。
米国・国防分析研究所(IDA)でオスプレイの主任分析官を務めたレックス・リボロ氏は、オスプレイが制御不能で墜落したとし、「ヘリモードで燃料を補給することができないという事実は、予期されなかった航空機の欠陥である」と述べ、オスプレイの新たな構造的欠陥を指摘しています。
あの墜落事故で大破したオスプレイ。これでもまだ安全だというのでしょうか。
オスプレイの墜落事故は起こるべくして起きたとの認識に立ち、欠陥機である危険なオスプレイの飛行訓練の即時中止を求めることは、自治体住民の生命の安全を守る市行政並びに市議会の責任であると強調したいと思います。
しかし、なぜこんな欠陥機が日本の空を縦横無尽に飛ぶことができるのでしょうか。
米軍機の飛行は国内航空法の適用が除外されているからです。
日米安保条約、そして米国・米軍に対し治外法権を容認する不公平な日米地位協定に起因する問題でもあります。この反対討論では、この問題については踏み込みません。
本年夏には横田基地に配備され、県内東北信地域を含むホテルエリアで夜間低空飛行訓練を予定していた米空軍のCV22オスプレイは、2019年の配備に延期・変更されたようです。
CV22は、空軍仕様のオスプレイで特殊作戦用に使用されている攻撃型輸送機です。MV22に比べ、夜間や低空飛行など、より過酷な条件で運用されることから、事故率がはるかに高く、危険度は飛躍的に増加します。
こうした事態を見据えて、請願は提出され、「墜落事故の原因究明がなされないままのオスプレイの飛行訓練は容認できない」、したがって飛行訓練を中止することを求めた内容です。
総務委員会では、この請願を不採択すべきものとした後、9日以来のオスプレイの飛来に対し、市民の不安が増殖されている事態を受けて、急遽、「オスプレイの安全性や今後展開される運用全般の状況について具体的内容を明確にし、関係自治体及び地域住民に対し、事前に十分説明すること」を国に求める意見書が準備されてきました。
オスプレイの飛行訓練に関し、次善の策ながら、そして、後追いながら、事前の情報開示を求め、市議会としての何らかの異議申し立てを国に表明するという点で、この意見書案には賛成はします。
しかし、何故、請願は不採択だったのでしょうか。
新たな意見書案の前文では「安全性の確保が不十分なままで飛行訓練が実施されたことは誠に遺憾とする」認識を表明しています。
「安全性の確保が不十分である」、すなわち、機体の安全性が確保されていないとするのであれば、請願が示した「飛行訓練の中止」を求めることに何ら躊躇する必要はなかったのではないですか。
請願の審査時において、日米共同訓練にオスプレイが6機投入されること、長野県内の上空を飛来することが予見されていたはずです。市民からの請願に対し、市議会は、真摯な先見性と市民の生命の安全確保を第一義とした判断が問われていたのではないでしょうか。極めて残念な顛末です。
オスプレイの安全性を確保しえない構造的な欠陥、そして、墜落の危険による市民の生命・財産の危機に鑑み、欠陥機であるオスプレイの飛行訓練の中止を求める請願を採択し、国に意見書をあげることが、市民の不安・疑念に応える道であると考えます。
以上申し上げて、反対討論とします。
採決結果は次の通りです。
なお、「共謀罪」創設に反対する請願を不採択すべきとした委員長報告に対しては、池田清市議が反対討論を行いました。会派内での役割分担です。