昨日2日に開かれた長野電鉄活性化協議会は、来年3月に「廃止」される屋代線の「代替バス運行計画」を決めました。この間、沿線4地区の作業部会で協議し、10月19日の4地区連絡調整部会でまとめられた原案に沿った形ですが、幅員が狭く渋滞解消が課題となっている国道403号線を主要道路とするため、沿線の地区代表からは、改めて安全面や定時性の確保、鉄道運賃水準の維持などについて、厳しい注文が相次ぎました。道路管理者や警察等との調整はこれからといった状況で、来年4月の運行開始に向けた課題は多いと感じました。
《路線》は基本的に国道403号線です。通学・通院を主な利用目的とする屋代線利用者の実態を踏まえ、朝・夕の便は403号線を運行し、昼間は一部、地域の集落内を周る路線となっています。朝の時間帯で、高速道路を使った松代駅発~須坂駅着の高速バス路線を1便設ける計画です。
《バス停》は全体で56カ所、朝夕便と昼間便では路線が異なることからバス停も異なってきます。
《便数》は屋代線と同じ15便を基本にして、須坂駅から屋代駅方面では直行便2便がプラス、屋代駅から須坂駅方面では信濃川田駅発などの直行便3便がプラスに。沿線高校の始業時間に見合ったダイヤ構成になっていないとの声があります。
《運賃》は「現状の屋代線の運賃と同程度」とされています。しかし、沿線からは「10年間維持してもらいたいが、せめて5年間は維持を」との強い意見が出されました。これに対し、協議会事務局は「利用状況、運行実績を見ながら見直しが必要。5年間は約束できない」と運賃の値上げを滲ませる答弁に終始しました。
《運行に必要なバス》は8台+高速貸切バス1台の計9台。運行事業者は長電グループ企業の長電バスになりました。当初の計画では新規車両の購入を4台で見積もっていましたから、バス購入費だけで倍増する形になっています。
協議会は今後、代替バスの試験運行を実施するとともに、来春のJRのダイヤ改正などに合わせ、計画を詰めていく予定としています。また、代替バスの利用促進や運行に対する評価指標についてもまとめ、次回協議会で決定することが確認されました。
この日の協議会では、《事業費》が示されませんでした。長電バス側と協議中とのことですが、代替バス運行により経費が抑制されるとされてきましたが、どうなのでしょうか。長電バスは路線の許認可に入るようですが、新しい国の補助スキームをどれだけ利用できるのかも不透明な中で、事業費案が示されないと、計画の全体評価はできません。
そもそも「総合連携計画」では、代替バスの利用者は屋代線利用者の4割にとどまるとの試算がされてきました。運賃の将来が見えないこと、自家用車への利用転換で渋滞に拍車がかかること、そして、そうした渋滞により定時性がどの程度確保されるのかが見えないこと、ある意味、将来に不安を抱えながの暗中模索の計画といわなければなりません。
また、全体的に「屋代線の代替」としてのバス交通の整備という面が強いことが気がかりです。通学の足の確保という面から止むを得ないところなのですが、河東地域を結ぶ公共交通の在り方を軸としつつも、長野市街地とつながる公共交通網の整備の視点、すなわち沿線3市のトータル的な公共交通ネットワークをいかに再構築していくのかといった視点が見えてこないところも大きな課題なのではないでしょうか。
道路整備とリンクする都市計画ともマッチングさせ、理想の公共交通網といった観点から、河東地域の交通ネットワークを考える必要があると思います。
一方、長電からは、屋代線の鉄道用地等の沿線3市への無償譲渡が表明され、用地の活用方法の検討が迫られています。まずは3市そろって受け入れるかどうかがポイントですが…。
協議会の最後で、松代自治協の中島会長は、「ディーゼル化による鉄路の存続」を明確に示さないまでも、「無償譲渡を受け入れ有効活用できる方策を早急に検討すべき」との趣旨で発言しました。
将来的に公共交通手段が途切れることがないよう「代替バス運行計画」の内容をしっかり吟味し検証するとともに、鉄道用地の無償譲渡を前提に鉄路の復活の可能性を実体化させる取り組みを急ぐこと、この二つが喫緊の課題です。
知恵を募集中です。取り急ぎ、法定協議会を傍聴しての感想まで。