先週2月14日、市からの市議会会派説明において、第2次長野市文化芸術振興計画の新年度スタートに合わせ、市芸術館の市民利用の促進と子どもの文化芸術活動の支援に、市文化芸術振興財団とともに総合的に取り組むとし、いくつかの施策展開のメニューが示されました。
子どもたちの文化芸術活動の支援…一歩前進
子どもの文化芸術活動の支援では、芸術館ホールの子ども利用料金の割引や、ティンパニやバスドラム(大太鼓)など大型楽器の購入、ワンコイン(500円)のキッズシートや料金半額のU25シート(25歳以下対象)など子ども優待シートの導入(いずれも財団事業)などを実施するというものです。
また、市民利用の促進では、附属設備(楽器、備品等)の全日利用(午前・午後・夜間の一日通し利用)の場合の利用料金10%割引、こども音楽(ジブリ)フェスティバルや長野市民による合唱「カルミナ・ブラーナ」公園など、プロと市民との共演プログラムの拡大(財団事業)とする内容です。
さらに、市文化芸術振興財団において、事業計画の達成度や効果を定期的に評価・検証し、今後の事業運営に反映するため、専門家や利用者棟で構成する第三者評価委員会を設置するというものです。
全体的に、市芸術館を拠点にして、子どもや市民の文化芸術活動を振興していくための施策として一歩前進といえる内容です。
ホール利用料金の半額免除は、説得力ゼロ
子どもたちの関連イベントに対し、これまで減免規定がありませんでしたから「半額免除」は一歩前進ではあります。
これまでも、減免適用を強く求めてきました。改革ネットの新年度予算要望においても、小・中・高の利用料金の減免を要望しています。
しかし、大きな問題が一つあります。
ホール利用料金の減免額です。何故、全額免除ではなく半額割引なのかという問題です。
しかも、減免対象の施設はメインホールだけで、他の施設(リサイタルホール・アクトスペース・練習室など)には適用されません。
文化スポーツ振興部が示した原案は、市内の子ども(高校生以下)の団体等が、芸術館ホールを入場料区分3,000円以下で利用する場合にホール利用料金と附属設備利用料金を半額にするというものです。
対象者は、幼・保・小・中・高校、子どもの文化芸術活動を行う個人・団体・法人で、障がい者や障がい者団体にも適用します。
下表にあるように、松本市民芸術館や上田市サントミューゼは、幼・保・小中学校は利用料金・附属設備ともに全額を免除、高校は半額免除としています。
ただし、県のホクト文化ホールは利用料金・附属設備ともに半額免除です。他県の事例として上越市の文化会館や富山市のオーバードホールの半額免除を参考に示しました。
県内の施設は、冷暖房費についても全額または半額の減免適用がありますが、市芸術館は適割引対象外とされています。
因みに「表」にない千曲市更埴文化会館、須坂市メセナホールでは、いずれも市内小・中学校が使用する場合は、全額減免。
また、市内の高校が使用する場合は、メセナホールが全額、千曲市更埴文化会館は半額減免となっています。
さらに、施設利用料の他、冷暖房費や備品類にも適用されています。
市側は、「県内及び隣県の類似施設の減免状況を参考に判断した」としますが、説得力は全くありません。
何故、県内施設のように全額免除としないのかとの問いには、明確な回答は帰ってきません。
例えば、市芸術館とホクト文化ホールの利用を考えてみましょう。
【算出条件】は、土日休日の昼間(9時~17時)の時間帯、午前・午後を通して借り、500円の入場料を徴収する場合です。
下表で比べると、市芸術館ホール(1,292席)の利用は143,400円が71,700円に、ホクト文化ホール・中ホール(1,070席)では86,000円が43,000円になります。
これに、冷暖房費が市芸術館の場合は3,500円プラスとなり、ホクト文化ホールは7,300円が全額免除となります。
教育委員会が全額負担するケースも
教育委員会では、4月の市立中学校吹奏楽祭や10月頃の小学校合同音楽会、中学校連合音楽会の会場費などについて全額を負担しているとされます。
また、毎年秋に開催されている小学生演劇鑑賞会についても全額市で負担しています。
教育委員会で会場費などの負担が裏打ちされているケースは良いのですが、教育委員会が負担するケースの基準が不明確なような気がします。
実態を調べるとともに、基準についても調査したいと思います。
芸術館利用に誘導できる料金設定へ…全額免除を
しかし、一般論として考えてみたいのですが、例えば、市内の小・中学校が音楽祭を開こうと計画した場合に、どちらの施設を選択することになるのでしょうか。
答えは、おのずと利用料金が軽減されるホクト文化ホールを選択することになるのではないでしょうか。
市芸術館は市内の子どもたちや市民の文化芸術活動の振興のために税金を使い建設した施設です。
活用されてこそ、文化芸術活動の拠点足りえるのです。
ところが、子どもたちの文化芸術のイベントを誘導できない料金設定では、本末転倒といわなければなりません。
近隣類似施設とのバランスも重要ではないでしょうか。
市芸術館は、新しい文化の交流・ 創造の拠点として、その可能性はまさに無限大であると標榜しています。
無限の可能性を有限にしてしまいかねない子どもたちへの支援策、改めることが賢明な対応だと考えます。
減免対応…原案の抜本的修正を
会派への説明の際には、再検討することを強く要請し、原案を持ち帰っていただきました。
改革ネットしての認識は「了解できず、再検討」です。
市芸術館の利用料金は、「長野市芸術館の設置及び管理に関する条例」で利用料金の上限を定め、指定管理者である文化芸術振興財団があらかじめ市長の承認を受けて定めることとされています(条例第9条)。
また、利用料金の減免に関しては、同条7項で「指定管理者は、市長の定める基準により、利用料金を割り引き、もしくは無料とし、またはその全部もしくは一部を返還することができる」と定めています。
つまり、利用料金の減免基準は市長が定めることになっているのです。
いわば、市長裁量ということです。
減免の抜本的拡大と芸術館内の他の施設への適用拡大を強く提唱します。
かつ、減免規定について、条例に明確に書き込んだ方がよいのではないかとも考えます。
市芸術館が、子どもたちの文化芸術への熱い想いが結実し花咲かす拠点となることを強く願い、市の適切な判断を求めるところです。
市長に申し上げたい。「これでは不発の元気玉ですよ!」と。
市芸術館の利用料金はそもそも高い?!
市芸術館の利用料金について、市の条例は上限額を定めるものですが、指定管理者である文化芸術振興財団は、上限額で利用料金を設定しています。
他の類似施設と比較するとメインホールで2倍近い高額利用料金設定となっています。
既に昨年の3月議会で条例は議決していますが、指定管理者である条例の運用について、目を配ってきてなかったと反省しています。
市芸術館オープンから1年、利用状況についても検証しなければなりません。
芸術館ホールの舞台は、上座と下座が通常施設とは反対で、演劇等の利用にあたっては不都合が生じているとの報告もあります。(市議会議員連盟と文化芸術振興財団との意見交換会で)
新年度予算案では、市芸術館運営事業に3億8,500万円余を投じるようになっています。そのほとんどが財団に対する指定管理料となります。
本会議及び経済文教委員会の予算案審議の中で、しっかりと検証・吟味していきたいと考えます。
【参考】➊長野市芸術館の設置及び管理に関する条例
➋長野市芸術館の利用料金[芸術館HP]