18日、長野市役所新庁舎・芸術館の免震ゴム交換時に発生したクラック(ひび)問題で、毎日新聞が「免震装置交換後びび、市庁舎外壁数百カ所」「「数百カ所は異常…専門家が問題視」の見出しで、詳細な記事を報道しました。
ヤフーニュースでも取り上げられ、全国ニュースとなり、一挙に波紋を広げています。
市は「幅0.3mm程度のクラックは5箇所」と説明
これまで市側は議会に対し、「幅0.3ミリメートル、長さ1メートル程度のものが5カ所で発生。補修する」と説明。「建物の構造安全上問題とはならない」との考え方も示してきました。
私自身は、市の説明に対し「その程度のクラック発生はやむをえないものなのか」と受け止めつつ、補修工事の責任(費用負担)と将来的な構造上の欠陥につながらないのかを質してきた経過がありますが、改めて議会の責任が問われる事態だと認識しています。
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毎日新聞の報道…数百カ所でクラック、異常
毎日報道では、クラックの「箇所数を示すシール」で「181」や「293」と記されていることから、クラックは数百カ所に及ぶとし、福岡大の高山峯夫教授(建築構造学)の「一般論では、ひびを発生させずに交換することは可能。長野市の建物の構造を見ると技術的に難しかったと思うが数百カ所は多すぎる印象だ。交換や建物の設計に活かすためにも市による原因究明が重要だ」との指摘を紹介。
また、ハシゴタカ建築設計事務所(東京都)の構造設計1級建築士である高見沢さんの「クラックゼロの建物はほぼないが、数百カ所は異常。仮に今後も多数のひびが出れば。交換以外の要因も考えられる。建物の経過観察が必要だ」との指摘も報道しました。
報道日夜、建設事務局からFAX
この報道に対し、市の第一庁舎・芸術館建設事務局は、18日午後7時20分に『毎日新聞掲載記事「免震装置交換後ひび」について』と題して、ひびの発生状況等について現段階の状況を報告する内容のFAXを議員あてに発送しました。
報告のポイントは次の4点。(下線は筆者)
➀ 外壁に足場を設けて詳細に調査したところ、幅0.3ミリメートルのものが11カ所確認
➁ 幅0.3ミリメートル未満のクラックについても確認され、位置及び数を現在集計中
➂ 幅0.3ミリメートル程度のヘアークラックは、建物の構造安全上、即問題となるものではないことを確認しているが、集計がまとまり次第、クラックの発生に関し意見を聞き検証する。
➃ 建具の不具合等の事象も確認されていて、併せて検証する
11箇所?、即問題とはならない?、誰から聞く意見?、建具の不具合?…初めて報告される内容です。
厳しい検証問われる
免震ゴムの交換工事における発生クラックが数百カ所に及ぶという報道は衝撃です。
これまで、議会に対し係る事実について報告がなされていません。
FAX内容を慮ると「集計したのちに対応方を含めて議会に報告するつもり」だったのでしょうか。
東洋ゴムによる免震ゴムの偽装が判明し、交換工事が全国で進められていますが、市役所新庁舎・芸術館における免震ゴムの全面交換は、初めてのものと推察されます。
免震ゴムは40年から60年で交換することを前提としています。本来、免震ゴム交換により、建物にひずみが生じクラックが発生することは想定されていないはずです。
➊必要なジャッキ1000基を準備できず500基のジャッキで建物をアップし行われた免震ゴム交換工事、そもそも500基のジャッキアップの工事方法が適正であったのか。
➋「異常」と指摘されるクラックの発生状況が、将来的に、建物の構造上の安全性を確保することになるのか。
➌変則的な免震ゴム交換工事になったとはいえ、設計及び建設工事における瑕疵担保責任が問われることは無いのか。東洋ゴムの経費負担だけで終わらせていいのか。
➍原因究明など、専門家・第三者による調査を実施し、信頼性のある安全担保が必要となるのではないか。
新庁舎は防災拠点ともなる重要な公共施設です。
改めて、施設の安全・安心に警鐘を鳴らし、厳重に検証していくことが問われていると考えます。
さらに、長野市の免震ゴム交換工事を、全国で展開される交換工事にあたっての教訓、警鐘にしていくことも問われています。
3月議会に急浮上する問題です。