まちづくり対策特別委で行政視察…姫路市「都市マスと駅前トランジットモール」・新見市「小さな拠点」・川崎市「グランツリー武蔵小杉」

21日土曜日はまたまた雪かきに追われました。除雪路線となっていない生活道路は排雪が課題です。隣近所の助け合いで対応するしかありませんが…。

さて、18日~20日、市議会のまちづくり対策特別委員会で行政視察に行ってきました。

兵庫県姫路市では、都市計画マスタープランと姫路駅前広場整備事業、岡山県新見市では哲西地区の小さな拠点づくり、神奈川県川崎市では、セブン&アイ・ホールディングスの開発部門を担当する㈱セブン&アイ・クリエイトリンクが運営する複合商業施設「グランツリー武蔵小杉」の状況がテーマです。

長野市で改定が進む都市計画マスタープランにおける策定手法、都市の将来像や小さな拠点づくり構想、中心駅と観光拠点を結ぶ観点からの駅前広場整備事業の今後、そして権堂地区再生計画見直しの軸とされる商業施設・イトーヨーカドーの店舗展開の在り方などを検討していくうえで選定されたテーマです。

まずはポイントと所感の報告です。

姫路市都市計画マスタープランと駅前広場整備

姫路市・都市拠点整備本部・姫路駅周辺整備室の皆さんから説明を受けました

姫路市・都市拠点整備本部・姫路駅周辺整備室の皆さんから説明を受けました

姫路市都市計画マスタープランについて

中核市とはいえ53.5万人の人口で都市規模が大きく異なりますが、「多核連携型都市構造」の実現を目標にしたコンパクトシティ+ネットワークの都市づくりの骨格は長野市とほぼ同様です。

市街化を抑制する市街化調整区域において、特別指定区域制度を導入し、より周辺環境と調和した適切な開発行為を誘導し、既存コミュニティの維持等を図る取り組みは一つのポイントです。
条例で定めることができる特別指定区域制度ですが、新年度に4地区に導入する予定とのことです。

市街化区域に都市機能と人口の誘導を図る立地適正化計画との整合性を如何に図るのかが課題と思われます。

壮大な?姫路駅広場・周辺の整備事業

JR姫路駅周辺では、山陽本線等の高架化・連続立体交差事業に伴いJRの貨物基地・車輌基地を移設した跡地で、「CASTY21」と命名された駅周辺整備事業が進められています。
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公共・民間で取り組む姫路駅前広場を中心とする「エントラランスゾーン」、民間が主体となってホテルやシネマコンプレックス、商業施設、医療系専門学校を整備する「コアゾーン」、市が主体となって文化交流施設・コンベンション展示施設を整備する「イベントゾーン」の3つのゾーンに分けられています。

土地区画整理事業を含む計画ですが、民間による整備が主力となっている点がポイントです。PPPに近いのでしょうか。もう少し研究が必要です。

姫路駅前に公共交通のみのトランジットモール

世界遺産である姫路城を焦点とする「大手前通り」とその起点である駅前広場周辺の公共スペースのデザインを市民とのワークショップで実現した稀有の公共プロジェクトとして注目されているのが駅前広場と大手前通り。2015年度のグッドデザイン賞を受賞したそうです。
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コンセプトは、駅前広場=交通広場という従来の図式を大きく変え、日本初のトランジットモール(公共交通機関と歩行者の通行に限定する街路)を整備するなど、交通のための場所から多くの人が回遊し楽しめる交流広場への転換です。

公共交通優先のトランジットモール化が実現できた背景には、駅前商店街の理解と姫路駅を中心に中環状線という道路網が整備されたことがあるように思えます。
交通セル方式による道路網の整備です。
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因みに、私は長野市の中央通り(善光寺表参道)のトランジットモール化を提案してきています。
現状では、トランジットモール化を目指した歩行者優先道路の整備事業が進められていますが、商店街の合意がままならずトランジットモール化は将来課題に先送りされている現状にあります。

姫路市でも、当初は荷捌き車の対応や客の減少を懸念し反対する声が強かったようです。

しかし、学識経験者を交えたまちづくりの協議の中で、理解と合意が形成され、今日に至っているとのこと。明確な将来ビジョン・コンセプトと行政のやる気があれば、市民合意は形成することができるのだと痛感しました。課題を一つ一つ解決していく道筋が必要です。

姫路市の取り組みはもっと深く調査研究し、長野市政に活かしたいと思います。

小さな拠点づくり…岡山県新見市哲西地区

岡山県新見市は、鳥取と広島の県境に位置し、H17年に1市4町が合併してできた新市。

JR新見駅前で

JR新見駅前で


新見市の南西部に位置する哲西地区(旧哲西町)では、町時代のH9年に「3.8haの用地を購入し、1.5haに「道の駅・鯉が窪」を整備するとともに、中学生以上の全住民にアンケートを実施、住民ニーズをくみ取り合意形成を図りながら、行政窓口サービス(役場から支局=支所に)、医療・保健サービス(診療所・保健福祉センター)、福祉相談サービス、子育て支援サービス(認定子ども園)、図書館・公民館の生涯学習サービス、そしてATMなど地域に必要な施設を1カ所に集約化・拠点化し、ワンストップサービスを提供しています。

この拠点施設の運営組織として、NPO法人「きらめく広場・哲西」が設立され、図書館の指定管理者を受託するほか、地域情報誌の発行や市民団体活動の支援、福祉有償運送、子育てサロンの開設など地域を支える活動を実施しているそうです。
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人口2,500人、高齢化率43.5%、新見市中心部まで23kmの中山間地域です。JR鉄道と国道が交通軸となっています。地区内の67集落を週1便のデマンド送迎バスが7路線(現状5路線)運行されています。

拠点を中心とした一体感の構築、集落と拠点を結ぶアクセス手段の充実、維持管理及び管理経費が課題とされています。

全体的に「小さな拠点づくり」には間違いないのですが、公共施設の再編・機能集約化という観点からの方が学ぶ意義が大きいという印象です。

「小さな拠点づくり」には、地域コミュニティの核となる学校施設の展望・活用が欠かせません。
「小さな拠点」という観点から考えると、哲西地区の小学校・中学校の再編の見通し、さらに中心市街地と結ぶ交通ネットワークの再編は「これから」といった状況に思えます。

診療所(町時代に医師を招聘、民間医療施設として開設、内科と歯科)の医師とも懇談できました。自治医大出身の地域医療に情熱を傾ける医師の存在に感銘しました。

診療所内で。医師2人、看護師5人の態勢。24時間体制だそうです。

診療所内で。医師2人、看護師5人の態勢。24時間体制だそうです。


長野市的には、中山間地域では国保診療所の維持が課題となっています。こんな医師を長野市にも迎え入れることができれば…と感じ入ってしまいます。

「グランツリー武蔵小杉」…権堂イトーヨーカドーの展開モデル?

セブン&アイ・クリエイトリンクの開発担当・伊藤さんとグランツリー支配人の斉藤さん

セブン&アイ・クリエイトリンクの開発担当・伊藤さんとグランツリー支配人の斉藤さん

タワーマンションに囲まれた商業施設、売上260億円

「グランツリー武蔵小杉」は、神奈川県川崎市の武蔵小杉駅前(JR南武線・横須賀線及び東急東横線)に、H26年11月にオープンしたセブン&アイホールディングスグループの大型商業施設で、権堂地区再生計画見直しの目玉とされるイトーヨーカドー再編にあたってのモデル商業施設の一つとして地元のまちづくり研究会も視察に訪れている施設です。
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グランツリー武蔵小杉の屋上庭園・広場から

グランツリー武蔵小杉の屋上庭園・広場から


㈱セブン&アイ・クリエイトリンクの開発担当である伊藤さん、若林さんと、グランツリー武蔵小杉店の斉藤支配人から説明・案内をいただきました。

川崎市中原区の武蔵小杉は、全国住みたい街ランキングで関東地区第4位だそうです。現状で15棟のタワーマンションが開発されています。居住人口は約24万人。周辺人口は5km圏内で約117万人にも及びます。

駅周辺には大型商業施設が3店舗あり、約500億円の売り上げが想定され、内、約260億円が「グランツリー武蔵小杉」で占められているとのことです。

敷地面積は7,500坪、営業面積は11,200坪、地上4階(店舗フロア、160店舗)、地下2階(駐車場820台)。屋上には4,300㎢の庭園・広場を整備。

総事業費は用地費を含め400億円で、全て自社展開です。
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施設内のフードコート

施設内のフードコート


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ターゲットは「子育てにも仕事にも一生懸命なハンサムウーマンとそのファミリー」だそうです。来店客の年代構成では、ママ30代、40代で62%と突出しています。50代以上は約14%だそうです。

権堂イトーヨーカドーの展開モデルになるのか

「グランツリー」は商業施設単体で見ると、立地条件に適った大変魅力的な商業施設であるとの印象です。
特に子育て世代をターゲットに、子ども広場などを開設し、保育園も施設内整備されている点は面白いと感じます。

説明いただいた開発担当は、長野市権堂のイトーヨーカドー開発も担当しているとのこと。私たちの関心事は、権堂のヨーカドー展開をどのように考えているのかに尽きます。

イトーヨーカドー長野店の売場面積は11,200㎢(約3,400坪)ですが、開発担当者は「グランツリーと同様の規模感で考えたい」としています。また、権堂地区周辺のマンション増加を踏まえ「ファミリー層向けの開発が考えられる」とし、事業展開には「地元の合意形成が一番、5年から7年を考えている」としました。5年後の善光寺御開帳までに整備を求めている地元との整合がどこまで図れているのか、いささか不透明な状況です。

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私自身は、権堂地区にヨーカドー的な商業施設が維持されることは必要であると考えてはいます。

しかしながら、グランツリー的な新戦略の大型商業施設が必要か、展望があるのか、賑わいを取り戻したいとする地区再生計画見直しの目玉とされる大型商業施設の展開が、賑わいを取り戻すインパクト足りえるのか、権堂地区全体の再生スキームを評価してよいのか、長野電鉄所有の用地を中心とする再開発事業という事業スキームが合理的でかつ有効なのか(市はどれだけの税金を投入することになるのか、その費用対効果は?)などなど、疑問というか問題が山積していると考えています。

権堂地区再生計画の見直しを巡る諸問題の整理をしっかり行いたいと考えます。

市側が提示している権堂地区再生計画見直し案のたたき台(信毎より)

市側が提示している権堂地区再生計画見直し案のたたき台(信毎より)

1月27日に「まちづくり対策特別委員会」が予定されています。都市計画マスタープランがテーマですが、権堂地区再生についても視察の所管を含めて調査・検討したいと思います。

[1月23日に一部加筆]

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