長野市はこのほど、“ながのきらめきジビエで元気な地域づくり”を掲げた長野市ジビエ振興計画をまとめました。
11月2日の市議会・経済文教委員会に続き、7日の会派総会で説明があったものです。
新しく設置された「いのしか対策課」の目玉事業といったところです。
農業被害を半減させ、長野市産ジビエのブランド化めざす
ジビエ振興計画は、野生鳥獣による農業被害の軽減とジビエ活用による地域活性化の新しい仕組みを構築しようとするもので、ポイントは4点。
➊年間の捕獲目標をイノシシ600頭、ニホンジカ700頭、計1,300頭とし、農業被害額を2,276万円(H27)から10年後には約1,200万円減少させ、概ね1,000万円程度に抑えることを目指す。
➋移動式解体処理車を導入し、捕獲獣の有効活用を図るとともに、新たな狩猟者の参入を促す。
➌新たにジビエ肉処理加工施設を直営で整備する。年間で600頭を処理し約10トンの食肉販売量を確保できる施設とする。今年度中に建設候補地を選定し、H31年度稼働を目指す。運営開始から5年後を目途に指定管理(住自協を想定)に
移行する。
➍ジビエを新たな地域資源として戦略的に活用し、中山間地域の活性化を推進する。ジビエ肉を地元特産品として活用するとともに、首都圏等への供給・販路を確保する。
新たな食肉加工施設整備の事業費は約3億5,000万円
現時点での事業費として、施設建設費、移動解体処理車の購入費、設備費等で3億5,000万円を見込み、財源は、過疎対策事業債(元利償還金の7割を国が交付税措置する有利な起債)で3億4,200万円を確保し、農水省の鳥獣被害防止総合対策交付金を充てるとされています。一般財源は6万円としていますが、借金の3割の返済は市の負担となります。
維持管理費は食肉の販売収入として2,400万円を見込み、人件費や維持管理費に充てると試算されています。
今後、精査するとされる数字ではありますが、課題は、持続的に年間600頭を処理できるのか、加工された10トンのジビエ肉の販路を十分に確保できるのかにあります。
既に支所長会議や住民自治協議会連絡会には情報提供され、現在、二つの地区で検討されているようです。
5日に訪れた信州新町フェアの折には、支所長や住自協会長が意欲的でした。
「捕らぬ狸の皮算用」とならないように
振興計画そのものは評価をしますが、「捕らぬ狸の皮算用」とならないようにしていくことが重要です。
昨年度の野生鳥獣による農作物被害額は約6,200万円で高止まり状態。この農業被害を縮減することが最大の眼目です。
イノシシとニホンジカは年間1,000頭前後捕獲されていますが、その大半は埋設処分せざるを得ず、高齢化かつ減少している猟友会の会員の皆さんには、負担が大きく捕獲意欲の減退が懸念されているとされます。
捕獲されたイノシシやシカは、これまで若穂地区に民設民営で運営される施設で食肉への加工を目指してきましたが、捕獲後1時間以内で施設に搬入しないと食肉として活用できない事情もあり、市全体をカバーできず、結果、稼働率が上がらず捕獲獣の多くは廃棄されているということです。
市直営の食肉加工施設の整備に合わせ、若穂地区の民間施設の利活用の拡大も課題となります。