「アベノミクスの影~進む格差社会の実態」をテーマに「戦争をさせない私の学習会」が8月19日夜、生涯学習センター・トィーゴで開かれ、ともに勉強しました。
戦争をさせない1000人委員会・ながので取り組んでいるもので、鵜飼照喜代表委員(信州大学名誉教授)を講師に「環境問題と民主主義」をテーマにした第1回目に続く2回目。
「フードバンク事業の現状と課題」について社会福祉法人・長野市社会事業協会「ななせ仲まち園」(障害者就労支援施設)の青柳與昌所長から、また「生活困窮者支援の現状と課題」について市生活就労支援センター“まいさぽ長野市”の土屋ゆかり所長から問題提起をいただきました。
社会福祉法人の社会貢献として…県下の”まいさぽ”に食糧支援
市社会事業協会が取り組むフードバンクは、県の信州パーソナルサポートモデル事業の実施に伴い設立された「NPO法人フードバンク信州」の運動と並行し、食糧支援を必要とするよう支援者の切迫した状況に応えようと、法人の社会貢献事業としてH27年1月から始まった取り組みで、「2HJ」(セカンド・ハーベスト・ジャパン)から食料提供を受けています。
★2HJ(セカンド・ハーベスト・ジャパン)とは?
「すべての人に食べ物を」を理念に、食品製造メーカーや農家、個人などから、まだ充分食べられるにもかかわらず様々な理由で廃棄される運命にある食品を引き取り、それらを児童養護施設の子どもたちやDV被害者のためのシェルター、さらに路上生活を強いられている人たちなどの元に届ける活動を行っているNPO法人。
➡セカンド・ハーベスト・ジャパンのページ
★フードバンクとは?
包装の傷みなどで、食品に問題がないも関わらず市場で流通できなくなった食品を、企業から寄付を受け生活困窮者などに配給する活動を行う団体のこと。
★フードドライブとは?
家庭に余っている食べ物を学校や職場に持ち寄り、それらをまとめて地域の福祉団体やフードバンクに寄付する活動のこと。
県下23カ所のまいさぽ(生活就労支援センターの愛称)からの支援要請に応じ、1人4回まで(2週間ごと)食糧支援を実施、月100件を超える支援ニーズに応えています。最大で8回までの支援で、5回目以降は送料等を受益者負担にしているとのこと。
「今、食べる物がない」人がいる社会…フードバンク信州で拠点施設を
要支援者は20代から80代まで年齢層は広く、0歳児を抱える家庭からのミルクの支援要請もあります。
電気・水道・ガスなどのライフラインが止められているよう支援者が激増しているとします。お湯などが必要なインスタント食品は使えず、非常食や缶詰が必要となります。
「2HJ」からの食糧では不足していることが大きな課題で、必要な食糧を支援するマッチング、即効的な支援も課題になっているとします。
県民にフードバンクやフードドライブを知ってもらうことをはじめ、地元企業等からの食糧支援を拡大させ、NPO法人フードバンク信州の拠点を県内4カ所くらいに設置することが求められているとします。
長野市も職員を対象に6月に第1回オフィスフードドライブを実施し、職員や市民から缶詰やカップ麺、お米などたくさんの食品の寄付がありました。
今後、どのように広げていくか、恒常的な拠点をどのように設置していくのかなどが課題となっています。
毎月80人、500件の相談…生活就労支援センター「まいさぽ長野市」
まいさぽ長野市の相談状況は、H27年度で相談人数は975人、相談件数は5522件にも及んでいるそうです。
40代男性が最も多く14%を占めること、最近65歳以上の高齢者の相談が増えてきていることが特徴とされます。
支援を通じ就労できた人は88人、増収となった相談者は10人。
➡長野市HP「生活困窮者支援制度」のページ
困窮者の発見~相談~支援~就労、それぞれの段階で課題が
相談者の傾向として3点指摘されました。
一つは、困窮の期間が長いこと…ひとり親家庭で子どものころから困窮、非正規の仕事にしか就いたことがない。
二つは高齢者の困窮ケースが増大していると…年金が少なく就労先もない。
三つは、生活困窮と社会的孤立が起きていること…保証人がいない、相談に自力でつながることができない。
こうした状況の中で、困窮者の「発見」、「相談」、「支援」、「出口(就労)」の4つの段階で、課題が浮き彫りになってきているとします。
それぞれの段階で、➊「発見」…関係機関等と協力して、早期に困窮者を発見する仕組みづくり、➋「相談」…縦割りでなく、総合的に相談支援を行う窓口の開設、➌「支援」…寄り添い型・伴走型の支援、家計管理相談の実施、➍「出口」…就労困難者に対する中間的就労等の「就労の場」の開発が必要であることが訴えられました。
そして、困窮者への個別支援、地域支援、政策支援を通して、生活困窮者支援を通じた地域づくりを目指したいと強調されました。
とくに「政策支援」の重要性を改めて痛感しました。
生活困窮者の厳しい実態…事例から
土屋さんの事例報告から、生活困窮者が置かれている厳しい状況が浮き彫りになります。
◆生活保護の同行申請と住居確保の支援
男性(30代)。派遣で住み込み先の寮にいたが、仕事を辞めたことで無職・住居なしに。就職活動をするが住所がなく採用にならず、手持ちもなくなり食料品を盗み逮捕された。釈放後の支援を弁護士から依頼され生活保護の同行申請を実施。
◆派遣で働く生活困窮成年への支援
男性(20代)。薄井家庭で生活が苦しかったことから、中学卒業後就職。その後、母親が死亡。職場での人間関係がうまくいかず退職。その後、派遣で働くが運転免許も持たないため職種が限定され低所得に。食糧支援をしながら就労支援を実施。
◆DVにより離婚ができないひとり親の世帯
母親と3人の子ども。父親のDVがあり別居。離婚を希望しているが、父親は応じない。離婚をしていないため児童扶養手当も支給されない。インフルエンザで長期に休んだたため仕事も辞めざるを得なくなり現在無職。食糧支援をしながら弁護士にも相談中。
◆子どもが生まれるが困窮
夫の週に優は230万円程度あるが消費者金融の支払いが月10万ほどあり生活できない。子どもが生まれたが粉ミルクもない。医療機関に相談し粉ミルクを支援。自己破産の相談も開始。
◆高齢者の困窮
70代の夫婦。夫の認知症が進み事故を起こしてしまった。示談金を払ったところ、手持ちのお金が無くなってしまい家賃も払えない状態に。食糧支援と大家さんとの交渉を実施。
◆住む場所がない高齢者
70代女性。母親の介護のため離職。母親死亡後、現在の住まいは家賃が高額なため退去せざるを得ないが、身寄りがなく保証人もいないためアパートや公営住宅に入居できない。
長野市政に求められる政策支援の充実へ
安倍首相による「一億総活躍社会」の言葉が躍る中、格差と貧困の拡大は大きな社会問題となっています。
「第2のセーフティネット」とされる生活困窮者自立支援が、充分な効果を発揮できるよう、長野市の政策支援の充実強化が問われています。
生活保護・生活困窮世帯の子どもの学習支援、ひとり親家庭の子どもの学習支援の取り組みと合わせ、9月市議会の課題の一つです。
第3回目は「特定秘密保護法」がテーマ
第3回目の学習会は、特定秘密保護法をテーマにします。
信州大学教育学部の関良徳准教授が講師です。
◆と き 10月27日(木)18時15分から
◆ところ 長野市県町「県労働会館5F大会議室」