7月27日~29日、市議会「改革ながの市民ネット」で、福島県郡山市、青森県八戸市、岩手県紫波町を行政視察。
郡山市はH17年度から取り組みが進む小中一貫教育
八戸市は中心市街地地域観光交流施設「八戸ポータルミュージアムはっち」
紫波町は官民連携(PPP)で取り組む施設整備とまちづくり「オガールプロジェクト」をテーマにしました。
まずは、視察を終えての所感を報告します。詳報は改めて。
【郡山市】10年前から小中一貫教育を試行…中学校区の再編、中山間地や市街地で
郡山市では、
➊市内西部の湖南地区(S40年、旧湖南村の合併地区)で、H17年、全国に先駆けて、5つの小学校を一つに統合し中学校と併設、施設一体型で取り組む小中一貫教育、
➋そしてH19年度からは市街地における過大規模中学校(行健中学校=1154人・39学級を擁する)の解消を図るため、中学校を二つに分離し、新しい明健中学校区において、校区内の3小学校と施設一体型・施設分離型を組み合わせて実施する小中一貫教育、
➌さらに市内西田町地区(S40年合併地区)では、地区内5つの小学校を統合した西田小学校と西田中学校を統合する新しい小中一貫「義務教育学校」=「(仮称)西田学園」をH30年度開校予定で準備を進めています。
3つのパターンで進められる小中貫教育…中山間地域の小中一貫教育、市街地における小中一貫教育、それぞれの特色ある小中一貫教育の模索状況、そしてオープンカリキュラムで全国トップレベルの教育水準を目指すとする新たな義務教育学校、9年間の一貫教育を試みる取り組むなど、それぞれの評価は別として極めて有意義な視察でした。
「義務教育学校」は、学校教育法の改正で今年度から可能となった9年間の小中一貫教育で、中一ギャップの解消に役立つとされる一方、小学校の統廃合に拍車がかかるといった課題も指摘されています。
文科省の調査によると、今年度4月に13都道府県で22校が開校し、来年度以降も全国で114校の開校が予定されているそうです。
長野市教育委員会では、市立小学校及び中学校における少子化に対応した新たな学校づくりの在り方や学校の規模、配置、通学区域に関する事項について調査、審議するため、「長野市活力ある学校づくり検討委員会」が動いています。
市内の4中学校区をモデルにした検討が進められています。
とくに学級維持が困難となっている中山間地域における小中一貫・連携教育のあり方の検討が喫緊の課題となっています。
また、公共施設の再配置計画における地域の拠点施設としての小中学校施設の活用・あり方も課題となっています。
さらに、調査研究を続け、長野市モデルとなる方向性を考えたいと思います。
【八戸市】中心市街地活性化の拠点…直営複合施設「はっち」
八戸市は、中心市街地活性化の拠点施設として、市民交流・観光拠点となる複合施設としてH23年2月にオープンした「八戸ポータルミュージアムはっち」を視察。直営で維持管理されている施設で館長の佐々木さん(まちづくり文化スポーツ観光部所管)から説明を受けました。
総事業費41億4000万円。開館から4年目のH27年6月には来館者400万人を達成、年間約90万人の来館者を誇る施設です。
愛称である「はっち」をはじめ「八戸の八」という数字をイメージコンセプトにしている点が特徴です。
地域の資源を大事にすること、市民と協働すること、まちなかに回遊することを意識し、「会所場づくり」、「貸館事業」、賑わい創出やモノづくり振興などの「自主事業」など3つの事業を展開しています。
観光交流拠点と位置付けつつも、「ひとがまちを想い、ひとはまちを動かす」のコンセプトに象徴されるように市民がまちの魅力を再発見し活用する拠点施設にウェイトを置いた運営がされていることが特徴と思われます。
24時間使用可能な創作スタジオや市民向けの貸キッチン・貸ブースを設けている点、また子育て支援施設である「こどもはっち」を併設している点が施設的な特徴です。
施設は歳入約2900万円に対し、歳出が約2億8400万円で、一般財源から約2億5500万円充当し、運営されています。
指定管理者を導入せず、直営にこだわっている点、そして「教育投資」であることを第一義に考え、施設使用料を高く設定することや事業を減らして事業費を抑制することを優先しないとしている点は、大いに学びたいところです。
ところで、中心市街地活性化のモデルとして脚光を浴びた青森市の官民複合拠点施設「アウガ」の経営破たんのニュースは驚きでした。1階から4階のショッピングフロアー部分を閉鎖し、公共施設として再生する方針が伝えられています。
振り返って長野市の中心市街地活性化基本計画です。
もんぜんぷら座の活用状況、生涯学習センター・トィーゴの運営、さらに権堂地区の再生問題、長野駅前地区への一極集中の抑制など課題が山積となっています。
【紫波町】PPP=公民連携で年間80万人が集う施設再編・まちづくり
岩手県紫波町は、盛岡市から東北本線で20分に位置する人口3万4000人の町です。紫波町の中心駅である「紫波中央駅」の前に広がるモダンな街並み形成が、紫波町のPPP(public-private partnership=公民連携)手法によるまちづくり「オガールプロジェクト」です。
利用地であった土地10.7ヘクタールを活用するもので、町役場(PFIによる移転新築)、図書館や子育て支援施設の公共施設と産直施設、サッカー場、バレーボール専用体育館、ビジネスホテル、保育所やカフェ、飲食店の民間施設、さらに熱供給施設やオガールタウンの宅地開発が、4つの街区で整備されているものです(整備中のものもあります)。
基本的に町は土地を定期借地権で提供し、建物建設は民間の資金(銀行から融資や民間都市再生機構等からの出資)と知恵で進められる事業です。一部の公共施設には国の社会資本整備総合交付金が充てられていますが、施設建設に補助金が使われていないことが事業の特徴です。
年間80万人が訪れる賑わいを創出しているそうです。
紫波町の公民連携基本計画は、中心部の日詰地区全体(紫波中央駅の反対側、旧商店街を含む)を対象とするもので、第一期が「オガールプロジェクト」という位置づけになっている感じです。
PPPによるまちづくりの成功事例として知られているプロジェクトです。
PPP手法は、その是非を含めてもっと勉強が必要ですが、民間主導の中で、テナント誘致の調査から家賃相場や必要床面積を設定し設計する、テナント入居率100%でオープンさせる「逆アプローチの不動産開発」の発想は、学びたいところだと思います。
テナントが入らずオープン時からリスクが顕在化する、あるいはテナントが定着せず運営リスクが発生する、従来方式の「事業計画あり・施設建設あり」の発想・手法から脱却する必要性を具体的な事例から痛感しました。
この事業のキーパーソンは、公民連携計画に踏み込んだ当時の町長と、東洋大学大学院の根本祐二教授のもとでPPPを学び、市長に提言した町出身の岡崎正信さん(現・オガールプラザ㈱代表取締役)だそうです。
ここでもまちづくりを引っ張るキーパーソンの重要性を痛感します。
オガールプロジェクトの成功を公民連携基本計画全体にどのように波及させていくことができるのか、旧商店街への展開をどのように図ることができるのか大変興味・関心が沸くところです。
いずれにしても、公共施設の再生や公共施設の今後のあり方を考えていくうえで、貴重な示唆となりました。