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2012年8月3日 第2期長野市中心市街地活性化基本計画の課題

 長野市中心市街地活性化の取り組みについて、長野県地方自治研究センターから原稿依頼があり、取りまとめたものです。自治研センターとしては、何処の自治体でも中心市街地の空洞化が問題となり活性化が喫緊の課題とされながらも、投資に見合った成果をあげられていない課題を浮き彫りにしてもらいたいとの狙いがあったのでしょうが、現状報告の域を超えるレポートにはできませんでした。現状報告として受け止めてもらえれば幸いです。
 「信州自治研」8月号に掲載されます。ただし、ページ数と他自治体の読者の関係から、個別事業等の記載部分はカットされています。このHP掲載の原稿は「生原稿」です。
 なお、「信州自治研]掲載バージョンはこちらから[PDF版]。 


 『門前都市「ながの」~心潤う歴史と文化が賑わうまち~』をテーマとする第2期長野市中心市街地活性化基本計画が、国の認定を受け、2012(H24)年度から5年計画でスタートした。
 善光寺門前町として発展してきた中心市街地は、長い歴史の中で独自の文化や伝統を育み、県都として経済・社会・文化・生活の中心的役割を担ってきたが、車社会の急速な進展、商業を取り巻く環境の変化、中心部の人口の減少などを背景に、中心市街地の衰退・空洞化という問題が深刻化している。何処の自治体も抱える政策課題である。
 長野市は、2006(H18)年のまちづくり法改正を踏まえ、都市機能を集約させ生活と賑わいの拠点となる“歩いて暮らせるまち”=コンパクト・シティをめざし、第1期中心市街地活性化基本計画を策定、2007年5月から4年11カ月の計画期間で54事業を展開してきた。
 2014(H26)年度末の北陸新幹線金沢延伸、2015(H27)年の善光寺御開帳を見据え、中心市街地に賑わいを取りもどせるのか。JR長野駅善光寺口の駅前広場の再整備、善光寺表参道の歩行者優先道路化、そして衰退著しい権堂地区の再生など課題が山積する中、第1期計画の総括、第2期計画の展望を探る。

Ⅰ.388億円を投資した第1期計画…数値目標、半数で未達成

(1)JR長野駅から善光寺表参道を軸とする中心市街地
 2007年(H19)5月に県内で初めて国の認定を受けた市中心市街地活性化基本計画(第1期計画)は、JR長野駅から国宝善光寺にかけての善光寺表参道を軸として広がる200haを中心市街地に設定する。西側の県庁、東側の市役所に挟まれた区域で、年間600万人が訪れる善光寺を中心に訪問者の回遊性を高めるとともに、まちなか居住を促進し生活拠点としての集積性を強めることが狙い。いわば「長野の顔」の再生と位置づけられる。【区域は図参照】
 第1期計画では、『まちなかのさまざまな資源を活かしつつ、善光寺表参道を中心に整備の終わった各拠点を「点」から「線」として結び、さらに回遊(快遊)性を高めることで「線」から「面」へとまちを育む』ことを目指し、「まちなか観光の推進」「まちなか居住の促進」「歩いて暮らせるまち」「多様な主体の参加」という「4つの方針」のもとに、「訪れたくなるまち」「住みたくなるまち」「歩きたくなるまち」「参加したくなるまち」の「4つの目標」を設定、交流人口と定住人口の増加を軸に、善光寺表参道の歩行者優先道路化事業やJR長野駅前の再開発など54事業に総額で約388億円(内、市費は約167億円)を投入し、活性化に取り組んだ。

(2)まちなか居住、回遊性に課題残す
 しかし、当初設定した4つの数値目標では、「訪れたくなるまち」「参加したくなるまち」でクリアしたものの、「住みたくなるまち」と「歩きたくなるまち」の二つで達成することができなかった。【下表参照】
 「住みたくなるまち」で設定した市街地の居住人口は、06年度の9660人から、わずか157人の増に止まり、目標の1万900人にと届かなかった。08年のリーマンショック後の景気低迷で民間のマンション建設が中止、凍結された影響などが響いたとする。
 「歩きたくなるまち」では、中心市街地15地点68カ所での歩行者・自転車通行量32万人を目標値としたが、06年度の26万3903人から11年度では3万7798人減の22万6105人と大きく落ち込んだ。
 市が昨年7月に市民2000人を提唱に実施したアンケート(930人が回答)では、5年前と比べての中心市街地の魅力については約4割が「上がった」とし「下がった」との評価を上回ったものの、中心市街地活性化への評価では「活性化していない」とする市民が約6割強に上る。
 また、満足度を図るDI値では、「安心・安全で住みやすいまち」では51.5%となるものの、「住みたい・住み続けたいまち」では-63.3%となるなど、現状として住みやすいまちであるものの、住み続けたいまちとはなっていない、中心市街地の課題を浮き彫りにしている。

(3)空洞化に歯止めかからず、再生は道半ば
 54事業の内、完了した事業は、表参道東町駐車場整備、長野駅前A-3地区市街地再開発、表参道灯篭復元、長野五輪メモリアルパーク整備、善光寺周辺街なみ環境整備・道路美装化など14事業。2期に継続するものはソフト事業で祭り・イベント開催、まちなか居住支援、市街地循環バス運行、共通駐車券、空き店舗等活用など14、ハード事業では中央通歩行者優先道路化、長野駅周辺第二土地区画整理、長野大通り歩道・自転車道整備、権堂B-1地区市街地再開発など9事業、内容を再検討し2期計画に位置付けるものとして後町小学校跡地活用計画策定(H24年度末に閉校)、長野五輪の表彰式会場であったセントラルスクゥエアの周辺地区の再生調査検討、起業家インキュベーション施設整備など7事業、2期計画に位置づけないものとして、街路整備や勤労者福祉センター跡地活用調査、みどりの自転車事業など11事業とする。
 計画したハード事業やイベント等のソフト事業は、「概ね実施できた」とされるが、計画策定や調査事業は「具体策に移行することができなかったものがある」とする。
 事業は進んだが、中心市街地の「空洞化に歯止めがかかっていない」ということであろう。市がまとめた「第1期計画の総括」でも、「1部で賑わいの回復が見られ、交流人口の増加がうかがえるものの、中心市街地全体の活性化には至らず、特に権堂町及びその周辺地域においては、空き店舗や低未利用地が増加している」とせざるを得なかったものである。
 市では、そごうやダイエーなどの大型店舗の撤退で拍車がかかった中心市街地の衰退を旧そごう跡地にSBC等を移転させる再開発事業や公益施設の導入で対応、また、中央通り・表参道に交流施設「パティオ大門」等を整備し、中心市街地循環バス「ぐるりん号」の運行による公共交通アクセスの利便性確保に努めてきたが、抜本的な活性化につながっていないのが現状だ。
 中心市街地においては、既に人の流れがかつての権堂から長野駅前へとシフトしているもとで、権堂地区をいかに再生するのかが、中心市街地活性化のカギとなっている。

Ⅱ.第2期計画がスタート…ハードからソフト、行政主導から住民主導への移行期

(1)テーマ、基本方針を継承し40事業へ
 市では、2011年度で終了した第1期計画に引き続き、本年度から5カ年の第2期計画に取り組む。前述したように、2014年度末の北陸新幹線金沢延伸と2015年4月の善光寺御開帳に焦点を当て、新たに策定した観光振興計画・新1200万人観光交流推進プランと連動させながら、テーマや4つの方針、4つの目標は継承し、新規の17事業を含む40事業を位置づける。

(2)数値目標を見直し下方修正
 4つの目標に伴う16年度の目標値は、「5年間で達成できる固い数値」(市まちづくり推進課)に転換、見直した。 「訪れたくなるまち」では、ソフト事業を中心に観光客等向けた施策展開となることから「善光寺仁王門前の歩行者・自転車通行量」を平日から休日に転換し、H22年度の25555人から26900人に。
 「住みたくなるまち」では、新規マンション建設で人口増となるものの人口減少が進む中、居住人口数から居住人口割合に変更、現状の2.35%から2.50%とする。試算ではH28年度で中心市街地居住人口を9449人と推定し、居住人口割合から2.50%としたもので、実質的に下方修正された。
 「歩きたくなるまち」では、事業と関連したまちなかの回遊性をとらえる観点から、中心市街地内の主要交差点6地点での歩行者・自転車通行量とし、現状の12万6478人から13万人とする。また、中心市街地の軸となる中央通りと権堂アーケード1階部分の空き店舗数を新たな目標値に加え、現状の29店舗から7店舗減の22店舗とする。
 「参加したくなるまち」では、もんぜんぷら座と生涯学習センターの年間利用者数を基準にし、現状の48万1707人から48万5千人とした。生涯学習センターの稼働率は42.9%(H22)で、もんぜんぷら座の稼働率64.3%を大きく下回っている他、センターが入る再開発ビル「トィーゴ」は、テナントが定着せず、3分の2が空き店舗状態で深刻な問題となっている。目標値はこうした現状を踏まえた、かなり低い数値と言えよう。

(3)確定事業で200億円見込む
 新規事業では、本年度末で閉校となる後町小学校の跡地利用の検討、セントラルスクゥエアでの大型観光バス駐車場の社会実験、権堂繁華街内を通る県道緑町線(県庁から長野大通りまでを東西に結ぶ県道)の未開通部分150mの面的な整備などのハード事業や、権堂地区での活性化に向けた社会実験、創業支援、まちなか賑わい創出などのソフト事業が盛り込まれた。第2期計画の事業費は、確定事業で約200億円、後町小学校の跡地利用、セントラルスクゥエアの整備の事業化を見込むと300億円を超えると試算されるようだ。



(4)ソフト事業へのシフト、商店街・住民の本気度がカギ

 JR長野駅前広場の整備事業や権堂B-1地区市街再開発事業、中央通り歩行者優先道路化事業などの継続ハード事業は第2期計画期間中に完了を見込む。全体的にハードからソフトへ、行政主体から住民主体の活性化事業への移行期と位置づけられよう。
 問題は、ハードとして整備される施設を拠点に、商店街の活性化、魅力ある個店の展開、中心市街地における地域コミュニティの再生など、地元住民が主体となるまちづくりを進められるか否かがカギだということである。
 中心市街地活性化は、善光寺表参道・メインストリートである中央通り沿いの商店街、権堂アーケードの商店街が蘇ることにある。その意味で、魅力ある店づくり・商店街づくりにおいて住民・店主の皆さんの本気度が再生のカギと言えよう。

Ⅲ.第2期計画、拠点事業の課題

 第2期計画に位置付けられた拠点整備事業の内、権堂地区の再生・権堂B-1地区市街地再開発事業、JR長野駅前広場整備事業、、中央通り歩行者優先道路化事業とセントラルスクゥエアの整備事業を概観したい。

1.確実性問われる権堂地区再生計画

(1)衰退著しい権堂
 中心市街地活性化の拠点事業の一つである権堂地区の再生は喫緊の課題とされる。JR長野駅と善光寺のほぼ中央に位置する権堂地区は、善光寺参りの精進落としを契機としながら、県内随一の繁華街として一世を風靡するとともに、県内唯一のアーケード商店街を擁し、生活拠点としての賑わいも保持してきた地区である。しかし、今日、空き店舗、青空駐車場が増え、若者層が長野駅前にシフトする中で、街の活力衰退が著しい地区となっている。

(2)始動する権堂地区再生計画
 賑わいを取りもどし、まちの再生に向けた具体策を官民共同で見出し具現化を目指そうと2012年2月に策定されたのが「権堂地区再生計画」である。中心市街地活性化基本計画を上位計画とする個別地区の具体的な計画である。
 《昼と夜の役割や表情の違い》、《市民と観光客の混在》、《歴史的資産と今日の営み》、《過去と現在》、《表通りと裏通りの表情》、《商売と暮らし》といった、相反する二面性が一つのまちに共存・混在する状況が、今の「権堂らしさ」と捉え、この「権堂らしさ」をキーワードにしたまちづくりを進めようとするもので、「楽」をテーマに5つの方針、9つの提案事業を位置づける。

(3)3つの核事業
 核となる事業は3つ。一つは、アーケード西側に「情報発信拠点の整備」として「権堂まちづくりセンター」を開設、二つは、アーケード東側に「市民交流ステーション」を権堂B-1地区市街再開発事業の一環で整備、三つに、アーケード中央部で「劇場を核とした滞留空間の整備」として映画館を活用した大衆文化の拠点形成=(仮称)権堂劇場、旧割烹跡地に市民が集う拠点として(仮称)市民交流市場(いちば)の整備を掲げる。
 この計画は、地元関係者等で構成された「権堂まちづくり協議会」を中心に事業推進を図るとされる。
 まちづくりセンターは既に開設し、中央部では、今年度、社会実験を行う。権堂B-1地区再開発事業は、県の認可を受け事業が本格化する。


 
 (4)課題残しつつ具体化する再開発事業
 権堂B-1地区の再開発事業は、新市民会館の建設候補地に始まり、紆余曲折を経てきた事業であり、また都市計画審議会では活性化への事業効果や公益施設の導入などへの疑問から一旦は否決となり、事業一部見直して何とか可決に及んだ、いわくつきの再開発事業である。
 長野大通りを挟んでイトーヨーカドーの東側に位置する区域約0.6㌶に、公益施設となる住民自治協議会の事務局など市民活動支援センターと事業系テナントが入る地上4階建ての北棟と、約80戸を予定する分譲マンションと飲食系テナントが入る地上14階建ての南棟を建設、中央には約1330㎡の公共広場を整備する。
 総事業費は48億7千万円で、内、市費として約12億円を見込む。公益施設の導入、公共広場の活用について、十分な市民合意が図られていないことが課題として残っているとともに、大きな市費を投入する事業となることから、権堂再生の確実性、実効性を懸念する市民の声は根強い。

(5)生活拠点の視点、事業効果を検証
 市議会のまちづくり、公共交通対策特別委員会で、権堂再生の現状と課題を探るため、権堂まちづくり協議会の皆さんとの意見交換を行った。権堂の再生に向けた熱意ある取り組みを実感する一方で、子育て世代の商店主からは「子どもたちの遊ぶ場所がない。児童センターなど子どもたちを預ける場所がない。若い世代が商売を続けられる環境整備が必要」との意見も出され、再開発ビルの目的である「人が集い交流する拠点」づくりと合わせて、「人が住まう生活拠点」づくりの発想が必要であることを痛感してきたところである。
 また、長野電鉄(株)が取得する2階から4階に入るテナントの継続性、まちづくり、賑わいへの効果も不確実なままといわなければならない。
 再開発事業は具体的にスタートするが、保留床の取得、公共広場の財産取得は9月議会に議案として提出される予定だ。

(6)住民主体の胎動に期待
 権堂地区では、若者が土蔵を活用しカフェやデザイン事務所が入居するオープンスペースを開設、新しい拠点となりつつある。また、権堂まちづくり協議会では8月に「権堂バル」(飲み歩き)を企画するなど、地元住民による再生への芽は確かに息づき始めている。しかしながら、B-1地区の再開発をはじめ、アーケード中央部の整備を含めた権堂地区全体の再生計画の確実性、実効性はまだまだ霧の中にある。民間主導の再開発とはいえ、市費を投入し支援しようとする事業であることから、市側から市民に対し、事業の効果、確実性について説得力ある方針が示されなければならない。議会の厳しいチェックが求められるところでもある。

2.生まれ変わる長野の玄関口…駅前広場整備

(1)総事業費、約53億円、H24年9月下旬から工事本格化
 1997(H9)年の新幹線開業や長野冬季五輪に合わせ暫定整備されてきた長野駅善光寺口の再整備が始まる。既に新しい玄関口として「大庇・列柱」をかたどった駅前デザインが決まり、8月には工事着手、9月下旬頃から工事が本格化する。新幹線が金沢延伸となる2015(H27)年3月までの完成を目指す大規模プロジェクトの一つだ。
 JRの駅ビル整備と同時進行する事業で、仏都・長野を象徴する大庇・列柱の整備、エスカレーター上下方向の整備、長野電鉄への乗り換えのための地下通路・エレベーター・公衆トイレの整備、再開発ピル・ウェストプラザから駅につながるペデストリアン・デッキ(歩行者専用デッキ)の整備が主な内容。
 高さ約18m、幅約140mの「大庇・列柱」は、フラッグや提灯、照明などを用い四季に応じたイベントを演出する。

2)JR駅ビル…3階建ての商業テナントビルに
 JR東日本長野支社の駅ビル整備は、ホテルメトロポリタンとMIDORIの間で、幅150m、奥行き30mの3階建・商業ビルとして整備され、ステーションションビル・MIDORIが経営主体となる。年内に基本計画が決定されるという。
 1階、2階には公衆トイレや駅前交番が公共施設として整備されるものの、基本的に物販系テナントが入り、3階はレストラン街として整備されるとのこと。いずれにせよ、1万㎡を超える商業施設として整備されることになる。地元商店街との協議・合意形成は言うまでもないが、「長野の顔の整備」とはいえ、駅前への一極集中に弾みをつけることになる。
 中心市街地全体のバランスある振興、特に再生が待ったなしの状況にある権堂地区の再生への影響を、今からしっかりと見極め、必要な手立てを講じていくことが重要である。

(3)市民参加・官民協働の運営の試み
 市側は、駅前広場の利活用・運営を市民参加、官民協働で進めるため、「長野駅善光寺口デザインフォーラム(仮称)」を立ち上げる方向性を提起している。既に5月に準備会を立ち上げ、7月には本格立ち上げを予定する。市民参画は重要な仕掛けである。将来的には、収益による自立的な運営と利益の社会還元を図ることを目指すとされることから、この組織の目的、運営、コンサルタントの配置等について、事業計画案の作成と並行してしっかり吟味する必要があろう。

(4)交通結節点としての利便性向上へ
 1日3万1千人が利用するJR長野駅、長野市最大の交通結節点の整備となることから、魅力ある玄関口であるとともに乗り換え等の利便性を向上させることが重要である。敷地的に制約を受けざるを得ない現況のもとで、公共サインの充実をはじめソフト面での施策拡充が不可欠である。

3.求められる公共交通優先のまちづくり

(1)表参道の歩行者優先道路化
 表参道・中央通り歩行者優先道路化事業は、歩道を片側1.5mずつ拡幅し、車道幅を9メートルから6メートルに狭め石畳化するとともに、歩道と車道を一体的に使えるよう段差をなくし、可動式の車止めを歩道と車道の間に整備する。ベンチなどを配置した休憩スペースも数カ所に設けられる。もんぜんぷら座の新田町交差点から国道406号線の大門交差点までの700メートルを整備区間とし、本年度内に550mが整備済みとなり、2013年度で完了する計画だ。
 道路整備に合わせ、沿道の商店街を中心に、魅力的な個店づくりの勉強会や誘客イベントに取り組み、中央通りの活性化に向けた取り組みを展開している。門前町らしい街並みの保全を目指した景観研究会も昨年発足し、民間主体の新たな動きも見せ始めている。

(2)大型バス駐車場の社会実験
 一方、セントラルスクゥエアに大型観光バス駐車場の社会実験が今秋に予定されている。善光寺観光を巡って、観光バス等が善光寺北側の駐車場を利用し、仲見世通りを歩かずに参拝を終える現在の在り方は課題となって久しいが、ようやく表参道から仲見世通りを通っての善光寺参りに転換させようとの狙いで行われる社会実験である。
 地元では、権堂地区の再生と連動させる形で、観光ガイドの養成をはじめ、社会実験を活かそうとの動きが始まっているものの、歩行者優先とする道路に大型観光バスが通行することの問題も浮上している。セントラルスクゥエアを東西に通行する県道・県庁緑町線の整備と関連するのだが、整備計画はまだ形になっていないのが実情だ。

(3)観光都市としての交通ルール・まちづくりへ
 歩行者優先道路化の事業目的に沿って、中央通りを公共交通のみの通行に限定するような交通セルの具体化を図ることが求められるところである。さらに善光寺観光にあたっては、国道406号線沿いに大型バスの降車場を設け、善光寺北側の駐車場で待機するような交通ルートを、観光バス・長野ルールとして整備することも検討が必要と思われる。公共交通優先のまちづくり、歩いて暮らせるまちづくりの試金石としたい事業である。

Ⅳ.活性化、道半ば…

(1)合併で市域が拡大し、中山間地域が7割を占める長野市の中心市街地活性化は、一般的に言われる都市機能の集積によるコンパクトなまちづくりという方程式では解けない難問だと考える。全市域には市民の日常的な生活圏域を拠点とするまちづくり、コンパクト・タウンの発想が必要であろう。そのためにも、生活圏域内、生活圏域を結ぶ、生活圏域と中心部を繋ぐ地域公共交通ネットワークが社会基盤として整備されなければならないのである。
 最大にして重要な交通結節点を包含する中心市街地の活性化においても、公共交通優先のまちづくりを促進する発想が欠かせない。生活路線バスへのICカード乗車券導入が10月から始まる。また中心市街地を循環するバス「ぐるりん号」も、運賃が100円から150円に値上げされるものの、運行時間の延長、増便など利便性向上が具体化する。こうした取り組みがまちの活性化に波及することを大いに期待したい。

(2)長野市中心市街地活性化のこれからの課題は、ハード整備がほぼ完了することを見越し、それぞれの施設拠点を「面」的に展開できるようソフト事業にシフトして行くことであろう。種として蒔かれている「街角に音楽がある街づくり」「表参道街歩き」「歩行者公共案内標識」「街の見どころ再発見」「観光ボランティアガイド養成」などの事業を育て定着させることである。と同時に、活性化のカギを握る商店街の自立への支援、若者の創業への支援を拡充し、あわせて空き店舗対策を具体的に形にしていくことである。

(3)中心市街地活性化には、第1期から第2期を通して600億円を超える市費が投入されることになる。事業そのものの費用対効果、特に施設整備の費用対効果の検証が厳しく求められるところであり、市民合意が不可欠である。
 権堂まちづくり協議会の動きや、駅前広場の利活用への市民参画の試みなど、住民が主体となるまちづくりを醸成し、市民が主役のまちづくりを体現する取り組みにしていくことが重要である。

 長野市中心市街地活性化計画の現状報告レポートに止まる内容になったしまったが、広くご意見を賜りたい。