12月議会は6日から9日の代表質問、一般質問が終わり、12日・13日の付託案件を審議する委員会審議を経て、16日の最終日を迎えます。今議会での論点・焦点をシリーズで報告します。
■市長…「市民会館、屋代線は“片付いた問題”」
一般質問の最終日、市長は「市民会館や屋代線の問題は片付いた問題だと思っている。決定した計画・方針に基づいて粛々と進めるだけ」と発言しました。“片付いた問題”との認識は、市長と市民との隔たりを象徴する“間違った認識”だといわざるを得ません。
■「合併特例債の活用延長の理由なし、計画通りに整備」
新市民会館の建設問題では、合併特例債の活用期限が5年間延長される見通しに立って、「この5年間を、建設基本計画の見直しを含め市民合意の形成のために有効に活用すべき」と提案してきていますが、市長は議会冒頭から「合併特例債の活用延長の趣旨は大震災に起因するものであり、現段階では、合併特例債の活用計画を変更・延長する特段の事情は見出しにくい」と述べ、「老朽化・耐震化が喫緊の課題であり、計画に沿って着実な推進を図る。複合施設として魅力ある施設にしていきたい」と現段階では合併特例債の活用延長を求めない姿勢を強調しました。
■合併特例債315億円は現在見込みで299億円を活用
H17年の1町3村の合併で活用できる合併特例債(建設費の95%に充てることができ、国が返済の70%を負担する借金)は、315億円が限度とされる中、現在の見込みで、第一庁舎・市民会館建設や学校耐震化などで、既に299億円に上り、H26年度末までには「ほぼ使い切る」見通しを明らかにしました。
■新市民会館の管理運営計画、今年度中にまとめ
新市民会館の検討にあたっては、市民ワークショップが30回開かれ、市民の意見が反映されたものになっているとし、「箱ものありきではない」と強調。その上で、「ソフト面で適時適切に検討していく」とし、管理運営計画を今年度中にまとめ、来年度中に運営管理実施計画を策定する意向を示しました。誰が管理し運営責任を負うのか、管理運営にどれだけの経費が必要となるのかなど、これはこれで要チェックです。
■合併特例債の活用延長による計画の見直しは非現実的?
市長は、合併特例債の活用期限を延長した場合の選択肢として、「一つに、市民会館と第一庁舎を現在地で別々に建設する方法(市民会館は現在地、第一庁舎は現施設の解体後の跡地に建設)と、二つに市民会館を別の場所に建設する方法が考えられる」としました。
【図1:市民会館建設調査特別委で示された設計デザイン・槇総合計画事務所の技術提案書より】
その上で、現在地で別々に建設する場合は、750台の駐車場やロータリー・広場の敷地確保が困難となり、また市民会館の閉館が現行計画の4年から7年以上となることから、市民に不便をかけるデメリットがあること。
別の場所に建設する場合は、権堂から現在地に変更してきた経過があり、「さらに建設地を変更することは大きな混乱を生じさせ、現実的な選択肢ではない」とし、いずれも退けた上で、「計画に沿って着実な整備を図っていく」としました。
計画の見直しが直ちに非現実的だとは思いません。基本計画で一部合築とした点に、現在地での建設にバリエーションをかけられる余地があること、建設に時間差を置くことは可能でしょう。問題は、より十分な市民合意を優先させるか否かにあると考えます。
合併特例債の活用期限の延長は単年度毎で最大5年間延長できるもののようです。市民合意の時間と建設工事の安全を期し工期に余裕を持たせる時間として、延長を活用することを求め続けたいと考えます。市民の疑問に答え、市民合意の質を高め、市民に理解し納得してもらってこそ、安定的な事業の執行を担保することになります。このままでは、「市民の声は結局のところ行政に届かない」との不信を広げ、市政が遠いものになってしまいます。
【図2:市民会館建設調査特別委で示された設計デザイン・槇総合計画事務所の技術提案書より】
■合併特例債の活用延長求める請願、賛成少数で否決
今議会には市民団体から「第一庁舎・長野市民会館建設基本計画の見直しを求める請願」と「新市民会館の建設を基本計画通りH26年度末までに竣工するよう事業推進を求める請願」など、相反する請願が提出されました。請願は12日の総務委員会で審議され、「基本計画の見直しを求める請願」は賛成4人、反対5人の賛成少数で否決、一方、「基本計画通りの事業推進を求める請願」は賛成5人、反対4人で可決されました。
*「第一庁舎・長野市民会館建設基本計画の見直しを求める請願」の請願事項
(1)総務省に対し、合併特例債の発行期限延長を申請すること。
(2)市民が感じている疑問について丁寧な検証と説明を行い、第一庁舎・長野市民会館建設基本計画の再検討
をすること。
*「新市民会館の建設を基本計画通りH26年度末までに竣工するよう事業推進を求める請願」の請願事項
(1)新市民会館は、同時進行の第一庁舎とともに、本来の施設の目的・機能に加え東日本大震災などの経験を
活かしながら防災拠点の使命を果たせる公の施設として、合併特例債の発行期限延長の有無に関係すること
なく、建設基本計画通りH26年度末までに建設を完成すること。
私は、市民会館が閉館したことで、文化芸術団体の皆さんが発表の場の確保に苦労され、新市民会館の早期建設を願う想いには理解を示しつつも、市民の間に、新市民会館は本当に必要なのか、どんな文化芸術活動の拠点としていくのか、管理運営はどのように行われるのかなどの疑問が未だに根強くくすぶっていること、議員提案の住民投票条例が僅差で否決になったこと、9月に議会が主催した市民説明会では、市民への説明が不十分で市民の理解と納得は十分に得られていないことを共通認識とした上で、新友会を除くすべての会派の代表が「合併特例債の5年延長を活用し市民合意の形成をやり直すべき」と主張したことなどを踏まえ、議会の責任として市民合意の十分な形成を最優先させるべきであると考え、「基本計画の見直しを求める請願」には賛成し、「事業推進を求める請願」には賛成しませんでした。
新市民会館の早期建設を求める文化芸術団体の皆さんにとっても、第一庁舎を含め130億円に及ぶ大事業であるだけに、市民の間にしっかりとした合意が形成され、納得づくで事業が進められ、市民総参加で文化芸術活動が大いに進展する方が、将来的に考えればかけがえのないプラスになると思うのです。
議員提案の住民投票条例案に賛成した公明党市議団は、どうも「事業推進」に転換したようですから、最終日の16日、本会議での採決も同じ結果になりそうです。
■市民合意形成に向けた課題は
問題は、十分な市民合意がないまま粛々と建設が進んでしまうことです。市民会館の解体工事が進む一方で、施設の基本設計づくりが進みます。基本設計の段階で、市民に説明しパブリックコメントを求める考えを示してはいますが、これまでの行政の姿勢を考えると大きな転換点にすることは難しいとも言えます。
私の立場は、第一庁舎は早期建替え、市民会館は建設見直しにあります。両施設を一部合築とする計画ですが、第一庁舎は防災拠点となり市民サービスを向上させるために計画通り建設を促進し、市民会館を切り離して検討し直すことは可能なはずです。
市民会館の建設を一時的に止める手段を法的に講じることは可能だとは思います(有効か否かは別にして)。しかし、今の段階で、そうした手法が市民の理解を得られるとは考えにくいと思います。となれば、市民の疑問を世論として形成し直し、行政にぶつけていくしかないと考えています。住民投票条例案を改めて議員提案する道はありますが、可決の展望は極めて厳しいと言わざるを得ない状況です。
では、できることは何か。一つは、行政側に徹底した情報開示のもとに、市民の声を聴く市民説明会を支所単位・全地区で開催するよう求めていくこと。2つは、議会として市民との意見交換会を組織的・計画的に行うこと。3つは、市民アンケート(市民世論調査)を議会・議員有志で実施し、市民の声を改めて把握し、行政側に見直しを動機づけさせること。などなどが考えられます。
皆さんのご意見をいただきたいと思います。
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