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2010年7月4日
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屋代線、実証運行始まる中、須坂市で活性化・再生考えるシンポジウム

ひたちなか海浜鉄道社長の「できることは何でもやる」姿勢に学びたい
 4日、長野電鉄活性化協議会が主催する「屋代線の活性化・再生を考えるシンポジウム」が須坂市・シルキーホールで開かれ、参加してきました。100人余りの市民や関係者が参加、ちょっと寂しい感じも…、でも内容は結構参考になりました。
基調講演では、茨城県のひたちなか海浜鉄道の吉田千秋社長が、「地方鉄道再生の条件-ひたちなか海浜鉄道再生事例を通して」と、同鉄道の再生の取り組みを報告。富山県高岡市の第三セクター・万葉線の再生に取り組んだ経験も交えながら「市民が存続を強く希望すれば、赤字は必要な社会資本の維持費として行政が財政支援することに理解が得られる」と述べました。年間定期券の販売やツアーバスの誘致、イベント列車の運行などで、「開業5年後の収支均衡に道筋が見えてきた」としました。同社長は「屋代線の場合は(公募されても)引き受けないかも」とする一方、「社会的便益(単純に収支の議論だけでなく、沿線外にも効果があること)を分かりやすく市民に納得してもらうことが重要」と存続に向けたポイントを紹介していたことが印象に残ります。

ひたちなか海浜鉄道は、営業キロが14.4キロ、全線非電化単線。茨城交通の鉄道部門撤退を受けて、「分社化」して新会社を第三セクターで設立、全国から社長を公募するというユニークな取り組みをした鉄道です。吉田社長は富山地方鉄道出身で高岡市の「万葉線」の再生に参画。社長公募に応募し、採用された人材です。同鉄道はH20年度に開業、70.5万人の利用者がH21年度には77万人に増加、現在は2.33億円の収入に対し経費は2.7億円で約3000万円の赤字だそうです。前述の通り、3年後には赤字解消の見込みとしています。
「残せるか!屋代線」と題したパネル討論では6人のパネラーが意見交換。須坂市の地域公共交通会議のアドバイザーを務める吉田樹・首都大学東京助教は「イベント誘客だけでは限界。住民や観光客のライフスタイルに根ざした鉄道として再生を考えるべきで、どう使いこなすかという発想が大事。事業者である長野電鉄は『市民からよくやっているな』と思ってもらえるブランドイメージを打ち出すことも必要。鉄道が無くなった時のことをよく考えて便益性を捉える必要がある」の指摘。また須坂ケーブルテレビの丸山康照社長は「生活鉄道から観光鉄道に特化すべきでは。鉄道そのものを観光資源に位置付け、マニアやファンが応援する仕組みがつくれないか」と発言しました。また井上忠恵・須坂市副市長は「屋代線は河東文化圏の支え。沿線住民、長電、行政のネットワークが不可欠」と述べていました。
これらの意見に対し、笠原甲一・長電社長は、物流から出発した屋代線は「受け継いでいるDNAが違う」とした上で、「重症の屋代線を残すには上下分離しかない。しかし、バスに替える余地はある」と述べ、事実上、屋代線の廃止・バスによる代替輸送の方向に言及しました。

ひたちなか海浜鉄道ではメイド・トレイン(マンガ化されたそうです)やネコ駅長、駅舎を使っての映画上映会、社長自らが案内する地域周遊など意欲的な取り組みが行われています。吉田社長の「できることは何でもやってみる」との前向きな姿勢と発言を笠原社長はどのように受け止めたのか、聞いてみたいところです。「DNAの違い」だけで事はすみません。少なくなったとはいえ46万人の利用者がいるのですから。3年間で13万人利用者を増やし60万人にする目標は、事業者を含めて合意された計画目標、できることは何でもやらなければ、それこそ目標達成は危うく、「バス代替で」になりかねません。
長野地区公共交通対策会議、沿線新聞折り込みで利用促進訴え
 1日から始まった屋代線の実証運行。長野地区公共交通対策会議で実証運行の成功を沿線住民に呼びかける独自のチラシを作成し、沿線世帯を対象に3日付の信濃毎日新聞に折り込みました。「このままでは廃止!」との危機感から、存続に向けた応援団としての活動の一環です。【ビラPDF版はこちら】

 2日には、対策会議として沿線の住民自治協議会、支所、高校や小中学校を周り、利用促進をお願いしてきました。若穂中学校では自治協と連携して屋代線をテーマにした絵に取り組んでいるとのこと、また松代高校では駅舎の清掃ボランティアに加え、松代住民自治協議会の屋代線対策部会に生徒会から2人の代表が参加していることなどをお聴きしました。松代高校の教頭先生からは、「実証運行のダイヤやサイクルトレインでは、乗り換えが進みにくい。高校生の実態に即した計画を工夫してもらいたい」との意見をいただきました。
 小中学校では、将来の進学高校の選択に関わる問題となることから、屋代線を利用した学校行事や屋代線をテーマにした夏休みの宿題など工夫を凝らして、子どもたちにも関心を持ってもらえるようお願いしてきました。
「新たな運行形態への移行の検討」に今から備えたい
 3ヶ月間の実証運行が終われば、その評価と分析を踏まえ、「新たな運行形態への移行」の検討が進みます。11月には検討結果をまとめる方針です。笠原社長の「残すならば上下分離」発言を踏まえつつ、上下分離方式や別会社化、ディーゼル車両やハイブリッド車両への転換、或いはDMV(デュアルモードビークル)の導入も見据えた考え方を応援団としても整理する必要を痛感します。


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