長野市はH22年度の一般会計予算案を発表しました。前年度当初予算を11.3%上回る総額1464億7千万円で、合併した信州新町・中条村とあわせた3市町村の当初予算計の1375億9千万円と比較しても6.5%、88億8千万円の増となります。増加分では子ども手当の事業費53.4億が6割を占めることになります。
ここ数年の「緊縮」予算から一変、国の地方交付税の増や、後から地方交付税で措置される臨時財政対策債という借金の増により、「積極財政」とまではいかないものの、民生費や土木費、教育費をはじめ全体的に予算を配分しています。
優先施策4分野に199億5千万円を投入
「重点性・優先性の高い施策の実現」を掲げ、「市政推進の基盤となる包括的施策」に①環境対策の充実②都市内分権の推進③産業基盤の整備④中山間地域の活性化など4点、その上で「選択と集中」により「優先的に財源配分を行う施策」に①子育ち・子育て支援の推進②エネルギーの適正利用③快適で安全な教育環境の整備④公共交通機関の整備の4施策をあげ、計199億5千万円(歳出全体の13.6%)を投入するとしています。H21年度での4分野への投入は98億1千万円で約2倍となっています。
膨らむ借金
歳入では、地方交付税236億円(前年比48億円、25.5%の増)、国庫支出金171億1千万円(前年比60.7億円、54.9%の増)の増加と市債156億6千万円(37.3億、31.3%の増)での増収が際立っています。市税は577億2千万円で0.4%の増。ただし、合併3市町村の合計額からは3.7億円、0.6%の減となっています。個人市民税が雇用悪化の影響で▲6.2億円の194.8億円、一方で法人市民税や固定資産税・都市計画税などは8.2億円の増を見込んでいます。
市債の発行では、合併3市町村の前年度合計額の125.9億円に比べ30.6億円、24.3%の増。地方普通交付税の振替財源とされる臨時財政対策債の22.1億円の新規増と小中学校の耐震化事業で21.4億円の新たな借金が大きな内容ですが、借金が膨らんでいることは要注意です。
民生費・教育費が伸びたものの借金返済も6.5%増に
歳出を部門別に見ると、民生費が子ども手当て支給や生活保護世帯の増加などで80.2億円、22.8%の増。衛生環境費は妊婦検診での超音波検査への公費負担の増や太陽光発電システムへの導入補助金の増で113.2億円の4.6%増。教育費は小中学校の耐震化事業に30.7億円など156.1億円、13.6%の増を図るものとなっています。一方で借金の返済にあたる公債費は、合併に伴う借金の増などにより216.8億円、1.3億円、6.5%の増となっています。
また性質別に見ると、人件費や扶助費、公債費の義務的経費は694.5億円で、87.8億、14.5%の増。普通建設事業費を柱とする投資的経費は224億円で43億、23.7%の増です。42.5億、23.7%の増となる普通建設事業費は221.9億円で、国・県の補助事業費が58.8億円(40.8%の増)、市の単独事業が163.1億円(18.5%の増)となっています。
第一庁舎・市民会館の建て替え基本構想を決定、調査費など計上
議会各会派からの意見は聴いたとする市側は、両施設の基本構想をほぼ素案通り確定し発表しました。新年度予算案には測量や地盤調査のための経費が盛り込まれました。私としては、市民会館の建設地について不確定要因を残す権堂地区ではなく、現在地を主張してきた一人として、「やっぱり既定方針通りか」との想いが募ります。そもそも合併特例債の活用を前提として10カ所から3地区に選定された過程も不透明です。市民からは「建て替えありき、説明不足」との声を多く投げかられます。予算案を認めるか否か、大いに悩むところです。
優先施策4分野などの新規・拡大事業
子育ち・子育て支援の推進
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113億
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新規
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私立保育所・幼稚園の子育て支援事業に補助、入園前の親の相談窓口を拡大
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4361万
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拡大
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放課後子どもプラン、校内施設を使う子どもプラザを17校区から34校区へ
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5億4400万
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拡大
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福祉医療費給付で乳幼児対象を小学校就学前から小3年生まで拡大
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17億7700万
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拡大
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妊婦健診で超音波検査の公費負担を1回から4回に拡大し年齢制限を廃止
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3億8000万
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拡大
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中学生まで月額1.3万円の子ども手当支給
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81億1400万
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拡大
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不妊治療費の助成を1回あたり10万から15万に
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5400万
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新規
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大豆島児童センターの建設(実施設計)
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2100万
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エネルギーの適正利用
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1億6900万
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拡大
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太陽光発電システム導入への補助、総額を増加
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1億1690万
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新規
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庁用車に電気自動車を2台導入
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337万
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新規
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市地球温暖化防止活動推進センターに補助 |
1400万
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新規
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省エネで駅東口地下駐車場の照明をLEDに交換
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1100万
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快適で安全な教育環境の整備
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79億8500万
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新規
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小中学校の耐震化で安茂里小や裾花中など7校舎の改築
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17億
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継続
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小学校の耐震補強工事や7校舎の改築耐震化の継続
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23億
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公共交通機関の整備
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4億9600万
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新規
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長野電鉄屋代線の活性化に向けた実証運行の経費
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3500万
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拡大
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ながのバス交通プランに基づく活性化策の経費
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1億8900万
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そのほかの特徴的な事業
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新規
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第一庁舎と市民会館の建て替えに向け、測量や地盤調査の経費
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2890万
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新規
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住民自治協議会の本格化に向け一括交付金である「地域いきいき運営交付金」をスタート
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2億5800万
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新規
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市民感覚を大切にするため公募市民と市職員による(仮称)「長野市の将来を考える年代別会議」の発足
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350万
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新規
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子宮がんや乳がん検診を推進するため、無料クーポン券と検診手帳を対象女性に送付
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4440万
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新規
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成年後見制度の活用に向けた支援事業
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409万
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事務事業等の見直しで5950万円を節減
継続的に実施されてきた事務事業や負担金・補助金を見直し、全部で60項目、5950万円の節減をしたとされます。補助金では地域公民館連絡協議会連合会など各種団体の連合組織の廃止に伴う経費減が見込まれていますが、住民自治協議会の部会ごと・テーマごとの交流・研修に引き継がれていくことが重要だと思います。
水道料金は7.71%の値上げに下方修正して提案
水道料金の値上げ問題では建設企業委員会で審議し、原案として示されていた9.%の値上げでは家計負担が重すぎるとし、7.71%に下方修正するよう申し入れてきましたが、申し入れの趣旨に沿い7.71%の値上げで条例改定案が提案されます。7.71%といえども大きな負担ですが、安全な水を安定的に供給する水道事業の維持も考えざるをえません。議会側の努力を多としてもらいたいと考えます。
「家計への直接支援」はどれだけ盛り込まれたのか
市長3期目の最初の予算編成となるH22年度予算案は、市長のマニフェストで示した「雇用確保が市政運営上の最重要課題、…子育て、介護などに対する直接的な家計支援を通して、市民の可処分所得を増やし、消費拡大を図ることにより内需を拡大していく経済成長戦略は欠かせない視点」としたことが、どれだけ盛り込まれているのかが、予算案評価の一つのポイントになると考えます。具体的に医療・介護分野とか農林業分野をあげていましたが、妊婦健診の拡大、放課後子どもプランの無料実施、福祉医療費給付の拡大、薬草栽培実験などの事業化が「答え」とされるのかもしれませんが、国の制度を超えて市独自に「直接的な家計支援」となる新しい事業が、もっと展開されるべきではとの感想をもちます。予算案を吟味し、暮らしのセーフティネットに有効な手立てとなっているのかを検証し、議会に臨みたいと思います。
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