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09年5月28日
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長野電鉄屋代線を公共交通対策会議で現地調査


 5月28日、長野地区公共交通対策会議で長野電鉄屋代線の現地調査を行いました。以下、感想を含めて報告します。

 [行程]  9:13長野駅発「しなの鉄道」~9:34屋代駅着
        ◎長電屋代工場を視察
      10:28発の屋代線に乗車~10:56綿内駅着
        ◎綿内変電所を視察
        ◎若穂住民自治協議会の皆さんと意見交換

      12:28発「須坂行き」に乗車~12:36須坂駅着
        ◎運転指令室と須坂車両工場を視察
        ◎長野電鉄労働組合事務所で対策会議

      15:48発の長野行に乗車し長野駅に

■しなの鉄道の車両検査を行う屋代工場
     
 最初に訪問したのは屋代駅にある長電屋代工場。H9年(1997年)しなの鉄道開業に伴い開設された屋代工場は、長電テクニカルサービス㈱が経営する施設で、鉄道車両の検査や修繕を行う施設だ。年商7億9千万円。宮本部長と竹腰工場長に案内いただいた。長電グループの工場なのだが、検査・修繕のほとんどはしなの鉄道の車両(169系、115系)で、長電の車両は臨時検査程度で年間に10日間位だそうだ。長電の車両検査は須坂工場が基本となっているとのこと。ここでは、40万キロ、3年間を目安に行う全般検査、3カ月に一度の月検査、車輪の転削や車輪の取り換えなどの臨時検査を主要な業務とし、外注に出している検査部門もあるそうだ。

 しなの鉄道の車両検査を主たる事業とする屋代工場は、屋代線の運行・存続にかかわる経営的な問題(投資を含めて)とはならないということであろう。

■屋代駅発の屋代線の利用者は8人…「今日は混んでるね」
       
 さてさて、2両編成の屋代線に乗車したが、屋代駅からの乗客は8人。これに私たちのメンバーが12人。松代駅到着までに新たに5人が乗車。雨宮駅から乗ってきたおばさんが「今日は混んでるね」の声には思わず笑ってしまいました。


■昭和36年製の綿内変電所、更新には10億円
       
 綿内駅に隣接する変電所は、屋代線(屋代~須坂間)運行に必要な電気を供給する施設である。中部電力から3万3千ボルトの電気を受け、3300ボルト(施設関係用)と1500ボルト(電車用)に変換し出力している。なんと昭和36年製の変電施設、耐用年数は20年から30年のため、交換部品がなく、独自に修理・修繕しているそうだ。施設更新が必要なのだが、約10億円はかかるという。


■綿内駅舎内に「公文教室」
       
 綿内駅舎内で「公文教室」が入っているのには驚きであったが、無人駅になったことによる駅舎の有効利用のようだ。駅舎の多角的な利用という点では「進んでいる」というべきだろう。駅前は、「西友」が撤退し、更地化されていた。宅地開発になりそうな話を伺った。ちょうど長野市の移動図書館が駅前に来ていて、意外に(これは失礼か)利用者が多いことにも驚き。駅舎と駅前の利用という点でヒントを提供してくれている。


■若穂住民自治協議会の皆さんと意見交換
 綿内駅のホーム反対側にある綿内町公会堂をお借りして、住民自治協議会の皆さんと意見交換した。自治協会長の滝沢さんをはじめ、地域振興部会長の前角さん、地元区長の久保田さん、そして自治協事務局長の小林さんらにご足労いただいた。4月29日に実施された自治協主催の屋代線ツアーのビデオを拝見しながら意見交換。また、ツアー時のアンケートでは、「初めて乗った」「何十年ぶりかに乗った」「数年ぶりに乗った」とする人が約70%。利用を増やすために必要な方法では、「観光などでの外部誘客」「通勤・通学時間帯の本数増」「料金の値下げ」「駅付近への駐車場充実」「沿線の住宅開発や工場立地」が並ぶ。「長野電鉄のPRや努力」も比較的高い。

 意見交換では「設備投資など長電の経営努力が足りないのでは」「通勤時間帯での須坂経由・長野行の直通路線の開設はできないのか」「法定協はできたが3年後には、やっぱり廃止なんてことにはならないのか」「何人の利用者が増えれば存続できる、といった数値目標を長電に示してもらえないのか。乗って残そう!とのかけ声だけではなかなか…」との意見をいただく。再生に向けた法定協議会がスタートしたとはいえ、「国の支援を受けるといっても本当に存続できるのだろうか」との不安が募っていることが窺える。確かに難しい課題ではあるが、法定協議会を設置したことの意義がまだまだ住民に伝わっていない(過度な期待は禁物であるとは思うが)ことを示しているのではないだろうか。
 対策会議で実施しているアンケートの結果等を踏まえ、行政の取り組み、法定協議会としての取り組みの課題を浮き彫りにしていく必要がありそうだ。

■長電…「屋代線への継続的な設備投資は困難」
        
 須坂駅で運転指令室や須坂工場を視察。いずれもなかなか時代物の施設で、地方鉄道の厳しさがひしひしと伝わってくる。

 長電テクニカルサービスの神津社長は「開業から90年を迎える長野電鉄の売上は年20億円。毎年5億円を長野線に投資、維持・修繕にも4億~5億円必要で約10億円を設備投資に回している。屋代線に毎年必要な3億円の投資が回せない状況で、約2億円の赤字から改善は困難な状況と言わざるを得ない。法定協議会を立ち上げてもらったが、時間をかけていう状況ではない。時間をかけずに検討していきたい」と述べた。率直な現状報告なのではあるが、利用者の姿が見えないことが気がかりである。
 地方鉄道の経営の厳しさは承知しているし、屋代線の経営状況の厳しさも理解するのだが、要するに「車両更新を含めて長野線優先で対応し、屋代線には投資してこなかった」ツケが回ってきているということではないのか。「企業としての経営努力はいかほどだったのか」ということが改めて問われそうだ。「行政や沿線住民の知恵と力を結集してもらって、何とか存続させたい」という企業としての熱意と姿勢も問われる。
 当初、長野電鉄側は「廃止せざるを得ないのだが…」と自治体に持ちかけたとされているが、県をはじめ自治体側が「それでは困る」とはね返し、国の支援を受ける形での再生・支援で合意してきた経過がある。 屋代線の存続を考える上で、地元沿線住民の皆さんとの連携は言うまでもないが、「経営スキーム」の問題は避けて通れない。木島線廃止の二の舞にならない、いや、しない取り組みが必要である。

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