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09年2月5日
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臨時市議会、補正予算案を全会一致で可決…定額給付金を論点に「幻の議案」も

「緊急事態」「深刻な局面」
 冒頭の議案説明で鷲澤市長は「市民生活の根幹を揺るがす非常事態」「県内の経済状況や雇用情勢は…深刻な局面」との現状認識を示し、「政府や行政の果たすべき役割は大きい」「『行政だからできる』ことで雇用を増やし、内需拡大のための施策を実施していくことが、猶予なく取り組むべき喫緊の課題」とし、具体的には「福祉的な施策にとどまることなく、社会的に有用な仕事を用意し、やる気のある人を雇用していく環境が確保され、『まちに元気が戻る』よう努めていくことが肝要」と強調しました。認識は同じです。

定額給付金事務費を含む補正予算は全会一致で可決

14分野38事業にわたる総額15億7600万の事業費は、定額給付金事務事業費を含みますが、当然のことながら全会一致で可決しました。4つの常任委員会すべてで、仕事とお金が市内事業者、とりわけ中小零細事業者に行き渡るよう発注を工夫すべき、定額給付金事業はすべ他の対象者に行き渡るように丁寧な事務執行をすべきとの要望が相次ぎました。
午前中で終わる予定が何と一日に
 会期は1日とされていましたが、午前中で閉会となる予定で議事日程は組まれていました。ところが委員会審議が長引いたことに加え、定額給付金事業にかかわって議員提案の議案が議事運営員会に提出されたことから、事情が一変。市長日程もあって、午後1時半再開が3時半に繰り延べられる格好に。議会事務職や秘書課は大変だったと思います。
幻の議案…緊急性がないとの理由から議案にならず
 議員提案の議案は政信会が提出したもので、「2008年補正予算においての定額給付金等のような一時的な給付・手当は国民理解が得られにくいことから、今後は長期的視点に立って国民の声を反映した生活支援等のための施策に取り組むことを求める意見書(案)」という長いタイトルのものです。趣旨は国民が違う有効活用を求めている定額給付金事業などについて、国の姿勢を正す内容です。共同提案の働きかけが市民ネットにもあり、具体的な表現はともかく、趣旨は賛同できることから、内諾していました。すんなり本会議での採決になると思っていました。
 ところが、この議案の本会議への上程を審議した議会運営委員会では、手続きをめぐり紛糾、最終的に上程しないことになり、「幻の議案」となってしまいました。
 地方自治法で定める「臨時会での付議事件」にかかる問題で、「臨時会で付議すべき事件は、あらかじめ長が告示しなければならない」「ただし緊急性がある場合は例外的に審議できる」(自治法102)とされ「緊急を要するかどうかの判断は第一次的には提案者が、二次的にはこれを審議する議会が行う…客観的な緊急性がなければならず、この判断を誤った場合は、議決は違法な議決となる」と解釈されているようです。この「緊急性」をめぐり意見が対立、多数決を取らないことを慣例としている議会運営員会は最終的に「この議案について意見がまとまらないため、本会議に上程しない」と決定したのです。
 定額給付金事業を審議している議会で、定額給付金事業に関わる生活支援対策について国に意見を申し立てることは、まさに緊急性があり、あたり前のことです。しかも、もっと有効な活用を求める世論が7割を超えているのですから、国民の理解と合意に基づく生活支援対策を求めていくのは極めて自然な流れともいえます。
 でも、議事運営については、一つ勉強になりました。
そこで、あえて賛成質問に立ち、「幻の議案」について言及
 もともとは「討論」に立つつもりはなかったのですが、こうした経過があり、急きょ「賛成討論」を行うことにしました。定額給付金事業については「悪法も法なり」の認識で対応せざるを得ませんし、給付金を切に待っている市民がいることも事実です。しかし、今後のことを考えれば、問題点は問題点として指摘しておく必要があると判断したからです。政信会の倉野議員も討論に、また与党の代弁者として公明党の近藤議員がそれぞれ賛成討論を行いました。

 私は「議案上程見送りは理不尽で残念な結果」「私たち議会人は政府や与党の代弁者ではなく、市民の代弁者である」と指摘しました。
賛成討論の内容

 議案1号、H20年度一般会計補正予算案を審議した各委員会委員長報告に賛成の立場で討論します。

 

(1)補正予算の活用について

 

補正予算案は総額15億7600万、14分野38事業にわたる事業費として計上されています。既決予算分と合わせると約20億円の資金が施設の改修や道路整備などの土木事業、物品購入に回ることになります。言うまでもないことですが、この仕事とお金が市内の中小零細企業に速やかに行き渡るようにすることが重要です。そのために1事業1社という発注ではなく、仕事をできるだけ分割・再分化して発注する仕組みが、今まで以上にかつ緊急措置的に求められると考えています。各部局でのきめ細かな対応を求めるものです。

 

ここ数日の間に、電機メーカーが相次いで1万人を超えるリストラを発表しています。まさに市民生活の根幹を揺るがす「非常事態」です。

市内でも、富士通長野工場がハードディスク事業から撤退し、360人の労働者の配置転換を進めると報じられました。労働者は大きな不安を抱えたまま、既に一時帰休に追い込まれています。電機通信関連の製造業部門は、すでに派遣労働者の雇い止め・解雇など雇用調整をかなり進めていますが、こうした事業分野への仕事の配分は難しいのが現実。企業に自らの雇用責任、社会的責任に真摯に向き合ってもらうことが重要であるし、行政としては、できる限りのセーフティネットを用意することが不可欠です。

議会との両輪で、万全の態勢を整えて行かなければなりません。

 

(2)定額給付金事業や子育て応援特別手当について

 

高額所得者への支給や有効的な使途を巡り迷走を続け、世論調査では7割から8割近くの国民が「バラマキではない有効活用を」と求めている「生活支援定額給付金」についてです。長野市での給付総額は約58億円に上ります。

 

財務相の諮問機関である財政制度審議会ですら「使途の見直しが必要、他の経済活性化策に振り向けるべき」と指摘せざるを得なかった「給付金」、与野党で協議し、国民が一番望んでいる使い方を見出すべきであったと指摘せざるを得ません。

 

国において、国民の合意のもとに着実、確実に効果が挙げられる施策を実現していく知恵をもっと発揮すべきです。全国市長会の会長の発言もありますが、市長としても、今後、国に対し、市民の声を踏まえ前向きな問題提起を求めたいと思います。

 

今後は、関連法案の成立の行方の不透明さがあるものの、行政としては粛々と手抜かりのなきよう準備を進めて行くことになります。

私の周りでも、「給付金どうするか」との話題はもっぱらで「2兆円使うなら、バラマキではなくて雇用や福祉に優先すべき」との声が強くある一方、「でも支給されることになるなら、そりゃもらうさ」との現実的な声が返ってきます。10年間実質所得が減り続けている生活苦を反映している声だと受け止めています。確実に必要な市民がいるわけですから、できる限りの有効活用を図ることが必要であると考えます。

 

とはいえ、問題の給付金、3年後には消費税の大増税が待っているのでは、景気対策どころか財布の引締めにしかならないのでは、との懸念は一向に晴れません。しかも住民票を持たない派遣労働者や日雇い労働者、ホームレス、世帯を別にするDV被害者などには支給できないことが心配されます。また申請主義によることから一人暮らし老人の皆さんは手続きすらできないということも考えられます。昨年の灯油代支援も申請主義のため半分近くの世帯にしか行きわたりませんでした。このことを教訓課すべきです。一番生活に困窮している層に届かなければ、支給する意図は半減してしまいます。事務執行は極めて大変ですが、丁寧な対応を市をあげて取り組んでもらいたいと思います。

 

さらに、国はこの給付金事業を勝手に「市町村の自治事務」にしましたが、最初から地域振興券やクーポン券にするなどの自治体の自由な工夫を認めていません。一人1万2千円、18歳以下と65歳以上は2万円を現金で給付する制度設計を変えることを認めていないからです。分権・自治と言いながら、やることは全く正反対。しかも事務費だけで825億円を要します。長野市の場合で2億3860万円。例えば、この事務費の一部で生活保護の母子加算廃止をやめることができる財源になることも押さえておく必要があるでしょう。

 

バラマキが懸念されるものがもう一つあります。子育て応援特別手当です。子育てに不公平感を残す場当たり的な制度設計で、しかも1回限りの支給では、効果のほどは不透明といわざるを得ません。もっと公平感のある制度設計が求められていたといえます。

これも、「とは言え」ということになるのでしょうか。1回限りとはいえ3万6千円の現金支給が生活にプラスになることは間違いありません。

 

国における制度設計の問題点を指摘しつつ、限定的になるざるを得ないにしても、有効活用を図り、市民の暮らしの安定につながる工夫を図ることを強く求めたいと思います。

 

(3)補正予算に盛り込まれなかった施策について

 国の第2次補正では、子育て支援で妊婦検診の公費負担拡大が盛り込まれました。5回までは長野氏も無料にしているところですが、6回目からの9回分について公費負担を拡大しようとするものです。

 

 長野市では、準備事務が間に合わないことから、新年度において実施する方向でけとうしているとのことですが、大きな子育て支援となることから、新年度予算に盛り込み、速やかなる実施を求めておきたいと思います。

 

(4)幻の議案について

 さて、補正予算の審議、定額給付金事務事業に関し、議会運営委員会では、「国民の声を反映した生活支援等の施策の実現を求める意見書」を提出したいとする動きに対し、臨時議会における付議事件として、この事案に緊急性があるかないかが論点となり、結局、本会議への上程は見送られ、「幻の議案・意見書(案)となりました。

議会内の出来事を市民に皆さんに伝えていくという立場から、あえて取り上げるものです。

 

「議案上程見送り」は極めて理不尽で残念な結果だと思います。

 

定額給付金事務事業を含む補正予算を審議・決定するために、この臨時議会は緊急的に招集されています。生活支援対策の一つとして、定額給付金2億3千万余の事務費について審議し、なおかつ、国においては関連法制の審議が現在進行形で進んでいます。また、生活支援対策という意味では、国の第2次補正、新年度予算において、現在、引き続いて審議されている最中であることを考えれば、新しい制度、すなわち定額給付金事業について、その制度がもたらす効果について、意見を提言し、さらに実効性のある生活支援対策の実現を求めて、国に対し意見をあげることは、まさに緊急的な課題です。

 

幻の意見書の内容は、国民合意のもとに継続的な生活支援対策を国において実施することを求めたものであり、緊急で時宜にあったものであると考えます。長野市議会の総意として意見書を採択したかったものだと強く思います。

私たち議会人は、政府や与党の代弁者ではなく、市民の代弁者であることをあえて、強調しておきたいと思います。

 

定額給付金事業をはじめとする緊急経済対策・生活支援対策について、国の制度設計の問題点を指摘し、注文をつけつつ、生活苦の中で市民の皆さんに有効活用される給付金となることを切に願い、賛成討論とします。


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