7月13日、長野市生涯学習センターで開かれた「公共交通を考える市民の集い」は市民の皆さんら450人が参加、講演やパネル討論を通じ、市民の生活の足の確保の方策、地域公共交通のあり方などを探りました。事務局を担った一人として、活発で良い意見交換ができたと思います。まずは第一歩です。取り急ぎの速報として報告します。
今回の集いは、事業再建中のアルピコグループ・川中島バスが不採算路線の見直しの協議を長野市に申し入れるなど、生活路線バスの存続が危ぶまれていることを受けて、茅野實・県環境保全協会長を実行委員長に、実行委員会方式で計画されたもの。予想を超える参加に市民の関心の高さが伺えました。
第1部では、交通ジャーナリストで国土交通省の審議委員も務めている鈴木文彦さんが問題提起。鈴木さんは、規制緩和の影響などで、全国各地で路線バスの経営が成り立たない状況を説明しながら、高齢社会への対応や地球温暖化防止の観点から「公共交通は社会的なインフラとして整備する必要がある」と指摘、「行政、事業者、市民が当事者意識を持ち、まちづくりと一体で持続可能な公共交通に積極的にかかわる必要がある」と訴えました。
第2部のパネル討論では、鷲澤正一市長が、公共交通の再生に市費を投入するには限界があるが、安全・安心のまちづくり、活力ある都市づくりを進めるためには公共交通の再生は必要であり思い切った対策が必要だ」と強調、川バスの不採算路線の見直しでは、現在、市が策定している「バス路線網再編基本計画」をベースに、「市がパス事業者や商工会議所と一緒に連携して、理想的なバス路線網の作成、利便性向上策も含めた抜本的な見直しを図りたい」としました。また、利便性を上げるためにバス情報案内システムやICカードの導入、バスレーン(専用・優先)の拡大、低公害車の導入などを提起、とくにバス情報案内システムは「厳しいバス事業者には困難、市の責任で行う必要がある」と言及しました。
川中島バスの青柳正博社長は、利用客の減少に加え燃料の高騰が追い打ちをかけている現状を説明し、廃てんぷら油からつくるバイオディーゼル燃料(BDF)100%で走るバスを導入するなど「環境に配慮し、コスト削減に努力しているが、一番の特効薬は市民がバスを利用して乗ってくれること、路線バスは日本の文化であり地域再生の鍵にしたい」と訴えました。
実行委員長の茅野實さんは、マイカーが排出するCO2を削減するため、マイカー利用者に新たな税負担を求めてはどうかと提案。私鉄労働組合連合会書記長の若林茂さんは、公共交通に働く立場から、規制緩和や安全性の問題などを訴えました。
会場との意見交換では、「工場団地への輸送をバスでおこなったらどうか」「バスの利便性をもっと高めるべき」「道路財源を公共交通に使うべき」「パークアンドライドの充実を」など活発な意見が出されました。
私は、実行委員会のメンバーとして企画準備に関わってきました。予想を超える参加にうれしい悲鳴、市民の皆さんの関心の高さを改めて痛感しました。会場に入りきれず、急きょロビーに椅子を並べスピーカーを設置する顛末も、資料も足らなくなり、ご迷惑をおかけしました。
公共交通の必要性、持続可能な公共交通の仕組みのあり方など全体的には良い意見交換ができたのですが、維持困難とされる不採算路線の見直しに対し具体的にどうしていくのか、より討論を深めるには時間が足りませんでした。見直し路線沿線の区長さんをはじめ利用者の皆さんも参加され、発言を準備されていた方もいらっしゃいました。反省点です。
でも、「乗って残す」という意識の広がり、マイカー利用の抑制につなげる取り組みの第一歩になったのではと思います。今回の集いをスタートに、地域公共交通の再生に向けた継続的な取り組みにしていきたいものです。
参加いただいた皆さん、ありがとうございました。
当日の資料の一部を掲載します。ご活用ください。
●公共交通を考える市民の集い・資料編(講師のレジメ含む)
●鷲澤市長の報告提起「持続可能な公共交通システムの再構築」
●川中島バス労働組合「利用者アンケート調査結果」|その1|その2|
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