もんぜんぷら座に12月末から新しく入居・進出するNTT東日本のコールセンター問題は、8月に開かれた9月定例市議会で取り上げ「コールセンターの持つ光と影、双方に着目ししっかりとした対応を図るべき」としてきましたが、このほどNTTコールセンターの入居に伴う賃貸借契約の概要が明らかになりました。11月26日の会派説明で概要が判明し、12月議会でも取り上げられました。(議会中にまとめていたのですが、掲載が遅れました)
私自身が指摘してきた不安は解消したのでしょうか。(070731「今日の話題」長野市に進出するNTTコールセンターの光と影を参照ください)市長はこの12月議会の本会議で「破格な契約」と表現しましたが、その中身を検証したいと思います。
契約の相手が「NTT東日本」ではなくグループ子会社の「NTTソルコ」である点、新規雇用があるとはいえ、すべてがパートで非正規雇用の拡大である点などが気がかりですが、基本的に、通常のオフィス・リースという意味での賃貸借契約から考えれば、「破格な契約」というかどうかは別にして、「市の担当者は随分と頑張ったな、ねじ込んだな〜」と率直に思います。でも、まだ気がかりな点が残ります。
■契約相手は「NTTソルコ」
契約相手は、NTT東日本本体ではなく、「NTTソルコ」という会社です。「NTTソルコ」はコールセンター業務と派遣業務を専門とする会社でNTT東日本が100%出資するグループ内の子会社です。私は、コールセンターの業務・運営は「NTTソルコ」が仕切るだろうと予想していましたが、契約は当然にしてNTT東日本と締結するものと考えていましたから、唐突な印象を持ちました。長期契約を担保するために、市とNTT東日本、そしてNTTソルコの3者契約とならなかったのかを問いました。市も追求したようですが、NTTグループ企業で100%子会社であることから、無理だったとしています。
■契約期間は10年間に
肝心の契約期間は5階と8階部分が10年間4ヶ月間、6階・7階が10年間となりました。契約解除については「契約期間の開始日から5年間、特別な事情のない限りできないもの」とされています。この「特別な事情」として想定されるものに@社会情勢または事業情勢により業務が継続できない場合ANTT東日本において情勢により業務の縮小または廃止となった場合B会社更生法、倒産、廃業等により会社が存続できなくなった場合C天災、紛争等により建物の使用ができなくなった場合の4点です。つまり、5年間はNTTが縮小・撤退を決めない限り、契約を解約することはできないというものです。コールセンターの運営では、企業判断として3年後くらいに一つの山場が来るかなと思いますが、NTT自身がもんぜんぷら座の施設整備に6億円投入することになることから、市長は「撤退はない」と強気です。この読みは間違ってはいないと思いますが、ここはNTTに企業としての社会的責任と法令順守を求めたいところです。
「特別な事情」の内容について、「特約事項」として契約に明記すべきと主張しましたが、通常の賃貸借契約から考えて不可能とのこと、せめて「特別な事情」の内容について互いに文書確認するよう求めました。11月20日に締結された契約書(12月20日に入手)では設備の変更や損害賠償金、修繕等の負担は借り手側に求めています。また「保証金」として賃料3カ月分=2500万が設定されてあります。
NTT側は当初2年契約を主張していたそうですから、市側は大きな譲歩を勝ち取ったといえるでしょう。不動産の賃貸借の基本となる借地借家法では賃借人(借手)を厚く保護していること等を考えれば、なおのこと、そう思います。ただし、5年間前に契約の解除が申し出られた場合に「保証金」をどのように扱えるのかは、検討の余地ありと思います。
■賃料は年間で1億1080万円余、4年間で「元を取れる」見通しに
家賃は1uあたり2200円で賃貸借面積が4198uとなることから、共益費を含めて1カ月賃料は923万5600円、年間で1億1080万円余(5階から8階の4フロアーを賃貸するH20年度から)となります。もんぜんぷら座の改修費として6億6千万を投入することを既に決めていますが、今のところ市財政の投入は5億7千万円と見込まれており、まちづくり交付金で国からの補助があるため、実際の市の支出は3億6千万、4年間で「元が取れる」勘定になる見通しが示されています。
■パート・シフト勤務となる雇用
400人の新たな雇用を生むとされたコールセンター。NTTソルコ(NTTSolco)の人材募集要項(ホームページより、12月議会前には長野の募集が載っていたのですが現在は掲載がありません)によると10月31日には募集を締め切り、11月5日から12月20日までの間が研修期間(1人当たり33日間)とされています。研修が終わった後に、テレホンアドバイザー(電話の受け答え)としての勤務かバックヤード(パソコン等の打ち込み業務と思われる)としての勤務かが決められるようです。
雇用形態はすべてパートで、5パターンの勤務時間となっています。当初、市の説明では12時間3交代制の勤務とされていたのですが、かなり変更されています。下記の一覧表(募集要項から作成)を参照してください。
実動7.5時間シフト勤務
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テレホンアドバイザー
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バックヤード
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条件=土日を含む週5日・週休2日・シフト勤務
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A勤務
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8:40〜17:10
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1200円
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1050円
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B勤務
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10:30〜19:00
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1200円
17時以降1500円
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1050円
17時以降1312円
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C勤務
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12:40〜21:10
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1200円
17時以降1500円
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1050円
17時以降1312円
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短時間勤務
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テレホンアドバイザー
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バックヤード
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条件=週5日勤務・週休2日
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実動3.5時間
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D勤務
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17:40〜21:10
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専担で1800円
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専担で1575円
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実動4.5時間
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S勤務
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8:40〜13:10
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1200円
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1050円
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労働基準法や最低賃金に抵触する点はないのですが、夜間勤務時間帯が結構あることが気がかりです。しかも、このシフト勤務では週休2日とはいえ変則フルタイム勤務となりますから、労働条件としては結構厳しいものになるのではないでしょうか。シフト勤務には雇用保険、社会保険が当然用意されているはずですが、どういう層の労働者がこの職に応募しているのかは興味のあるところです。
■市の助成は最大で1億円に
市では雇用促進企業立地支援事業を用意していて、事業所の新設・増設などにより長野市内から新たな雇用を行う事業者、または新たな雇用を行うとともに賃貸するオフィス等の改修を行う事業者に対し、助成金を交付することになっています。
雇用創出に関する助成では、操業開始後3年以内にしないから常勤雇用者を1年以上雇用するものを対象に、101人以上の新規常勤雇用者1人につき「20万円」を交付。限度額5000万円で1回限り。
施設改修に関する助成では、事業所の改修に必要な経費が2000万以上になる場合に、施設改修に要する費用の1/2以内で、限度額は常勤雇用者数に100万円を乗じた額または5000万円のいずれか低い方とされています。
■NTTにとって1年分の賃料がタダになる?すべてに説明責任を
400人の新規雇用というフレコミでしたが、シフト勤務であることから新規雇用者数は、今のところ不明です。短時間勤務雇用者は、この制度の対象となりません。シフト勤務体制では、完全パートとはいえ「常勤雇用」になるものと思われ、いずれにせよ、NTT側に「人」と「施設」で最大1億円の助成が可能となります。
市が用意している助成金制度ですから、条件が整えば交付することになるのでしょうが、1年分の賃料を「チャラ」にするような結果に、つまり助成金を含めて「元を取れる年数」は5年間ということになります。この辺りのことは市側は「協議中」とし、真相は定かではありません。
契約内容はNTTを相手に頑張った結果と評価はしますが、市側には、いろんな見通しを含めて、全体でいくら投資することになるのか、そして何年で回収できるのか、持続可能な契約にするためにどんな手を打つのか、もっと率直に議会に、そして市民に説明する責任があります。
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