3月9日に一般質問を行いました。テーマと質問内容は次の通りです。
テーマ
1.地球温暖化防止に向けた「長野市版カーフリーデー」の具体化について
2.子どもの安全・安心な居場所づくり、長野市版「放課後子どもプラン」について
3.犀川浄水場運転管理業務民間委託のその後について
4.消費者行政の充実について
5.人権同和政策課の将来について
6.成人学校の受講料の値上げ問題について
7.いじめの実態把握と対策について
43番、市民ネット・布目裕喜雄です。通告に従い質問します。なお、その他の「いじめの実態把握と対策について」は割愛します。
質問の第一は、《地球温暖化防止に向けた「長野市版カーフリーデー」の具体化について》です。
(1)環境対策の充実は、市長が新年度重点課題として掲げた7つの内の一つです。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告をはじめ、この記録的な暖冬に市民は地球環境の異変を実感しています。地球温暖化対策ではESCO事業や小水力発電に加え、温室効果ガスの測定ソフトを開発し意識啓発を図る試みなど具体化されているところですが、地球温暖化防止に向けた国際的な取り決め「京都議定書」の採択から10年目の今年、もう一つの新しい取り組みとして「長野市版カーフリーデー」の具体化を提案したいと思います。
(2)カーフリーデーとは、地球温暖化防止などを目的に、都市における自動車の利用と、それを通じた都市生活のあり方を見直すことを呼びかけているもので、欧州では、毎年9月22日を「カー・フリー・デー」と定め、「街中では、マイカーなしで(In
town, without my car!)」をキャッチフレーズに、マイカーの入れない地区(カー・フリー・エリア)を設けたり、公共交通機関の利用促進等により、車に頼らない生活を市民に体験してもらう様々な催しを実施するイベントとして、また社会実験的な取り組みとしても位置づけられています。
(3)そもそもは1997年、フランス北西部の小都市ラ・ロッシェルでの「車のない日」が発端となって始まったもので、98年にはフランス国土整備・環境省が国の事業として実施、EU(欧州委員会)全体では環境プロジェクトの一環に位置づけられ、2002年からはさらに発展させ、9月16日から22日を「モビリティウィーク」に設定し、カーフリーデーを含む様々な取り組みが実施され、広く市民に受け入れられているといいます。2006年には世界36の国や地域で1311の都市が参加または賛同する世界的イベントとなっています。日本からは松本・横浜・名古屋の3都市が賛同都市として参加しています。
国内では、自動車利用の自粛を呼びかける「ノーマイカーデー」という取り組みが一般的ですが、カーフリーデーが区域内の自動車交通を完全規制して“車のない生活”の体感を重視する点で概念的に異なるともされています。考え方は違いますが、国内では「ノーマイカーデー」の方がわかりやすいと思います。
(4)松本市では市政100周年の企画としてこの世界的イベントに正式参加することを決定しました。国内初の取り組みとなります。条件の違いがあるとはいえ、松本市でよい先例を作ってもらい、県都・長野市でより良いモデルを作りたいものだと考えます。正式参加するには、市街地の一定区域をマイカー乗り入れ禁止区域に定めること、公共交通などの利用促進など新たな交通施策を事前に実施すること、区域外にマイカーを止める駐車場を設けることなど7項目の条件が決められています。国内の賛同都市がマイカー自粛の啓発運動に比重をおいて取り組まざるを得ないのは、「マイカー乗り入れ禁止区域の設定」条件にあります。いざ具体化となるとハードルの高い条件です。
(5)課題は沢山ありますが、中央通りの歩行者優先化を進める「表参道ふれあい通り計画」や「みどりの自転車」の取り組みが始まっています。善光寺を中心とする門前観光都市として、オリンピックを経験した国際都市として、また市制施行110周年の節目の年となることからも、ぜひとも具体化しましょうと強く提案します。今年、正式参加までの段取りが組めればよいのですが、なかなか難しいところもあります。せめて賛同都市として名乗りを上げ、地球環境都市・長野市の新しいステージを市民とともにつくりたいものです。
二つ目の質問は、《子どもの安全・安心な居場所づくり、長野市版「放課後子どもプラン」について》です。
(1)厚生労働省の「放課後児童健全育成事業」と文部科学省の「放課後子ども教室推進事業」を一体化させる「放課後子どもプラン」の具体化について、「長野市版」という冠をつけた割には、ちょっと尻すぼみかなという印象を持ちます。地域の受け入れ態勢、学校施設・空き教室の利用の限界、中核市では事業費3分の2負担となり、当初より負担増となることなど、背景にある事情を理解はしますが、といったところです。
(2)子どもたちの安全で安心な居場所づくりにとって「放課後子どもプラン」が効き目のある施策になることを期待している一人ですが、一方で児童センターを運営している所長さんや厚生員の皆さんからは、「学校施設を利用した一体的な運営」という方針に「児童センターはどうなるの」という戸惑いと不安が広がっています。学校施設とは別の場所に「第二のお母さん」がいるという子どもたちにとって「安心と憩いの場」になっている児童センターの役割を大切にしたいと思います。「放課後子どもプラン」は「一体的」といえども児童センターと放課後子ども教室の2本立てです。具体化にあたり、児童センター・児童館は拡充していくのだという姿勢を明確にし、現場にメッセージを贈り応援してもらいたいと考えますが、いかがですか。
(3)その上で、「長野市版」というのであれば、児童センター等の運営は児童福祉法による制限がありますが、法による縦割りを越えて、また共働き世帯の増加を見越しながら、家庭環境ではなく、学校にいる子どもの時間に着目し「低学年は児童センター・児童館で、高学年は学校内施設で」そして「放課後子ども教室を授業の補完としないこと」を基本に、子どもの居場所を確保していくことを考えてはどうでしょうか。すべての子どもたちに放課後の居場所を提供していく方策として提案します。
三つ目の質問は、《犀川浄水場運転管理業務民間委託のその後について》です。
(1)昨年9月議会で大きな焦点となった犀川浄水場運転管理業務の民間委託は、1月に6社による指名競争入札が行われ、予定価格1億4136万円に対し、9900万円で株式会社ジャパンウォーターが落札しました。落札率は70.03%です。既に契約が締結され、浄水場では4月からの本格稼動に向け研修が始まっています。当初、債務負担行為として3年間で1億5000万円を予定していましたから、約3分の2の経費で大きなコスト削減にはつながったのでしょうが、「こんな価格で落札して、ほんとに大丈夫なの」と逆に心配が募ります。今回の入札は低入札価格調査にかかりましたが、調査の結果、OKとなりました。ただし、この調査での注目点は、「事務業務費、技術経費、間接業務費、諸経費を低く積算しているが、企業のスケールメリットと企業努力によりカバーできる」と見積価格の妥当性を思料しつつ、「地元企業との連携を密にし、技術者の育成を行うとともに、地元採用者の人件費を不適正に削らないよう」にとの意見を付し了解されている点です。付帯決議つきの契約ということになります。設計担当課の皆さんも心配な部分なのでしょう。
(2)委託先であるジャパンウォーターは長野市水道工事協同組合と連携し、10人の人員配置を計画しています。水道局からは2名体制となりますから計12名体制です。水道技術管理者である統括責任者と主任技術者、2名が日勤、水道施設管理技師3級の資格を有する正社員4人と資格を有していない長野市水道工事協同組合の職員4人、計8人による変則2交代制勤務が予定されています。浄水場の場長さんからは常駐する2名の技術者さんは大変優秀だと伺いました。これらの限りにおいては、9月議会での水の安全を保持するための理事者の皆さんの約束が履行されてはいます。
(3)それでも、9900万円という落札価格に大きな心配がぬぐえません。安ければよいという問題ではないからです。必ず重大な歪が生じることは「あずみ野観光バス」の事故が示しているのではないですか。今回、ジャパンウォーターが利益よりも業績・実績を考え落札されたとして、9900万円すべてを人件費に換算した場合、一人当たりの年間人件費は330万円です。仕様書に基づき諸経費を割り出すと2400万円、残り7500万円を人件費とすると一人当たり年250万円と試算されてしまいます。いずれにせよ、賃金ベースで考えると県内の平均を大きく下回ることになります。24時間365日、変則2交代の浄水場勤務は過酷です。使命感と献身性があってはじめて、水の安全が守られているのです。低い賃金で集中力、使命感、献身性が維持できるのでしょうか。地元事業者である市の水道組合にしわ寄せされることがないのでしょうか。水道組合さんがこれでは受けられないとなった場合、どうするのでしょうか。4月は目の前ですが、市民の命の支えである水の問題ゆえに深刻に受け止めるべきです。落札価格から想定される危うい状況をどのように判断しているのか、果たして安心の水を安定的に提供する市民サービスの向上が確保できるのか、その認識を明らかにしてもらいたいと思います。万が一の事故を事前に防止し安全を確保するため、契約の見直し、あるいは落札の見直しを行うべきと考えます。市民の安全第一の賢明な判断を示していただきたいと考えます。
四つ目は《消費者行政の充実について》です。
(1)2月17日付の市民新聞での「消費者基本法施行で関連する市の条例の改正案を検討、08年度中の条例改正をめざす」との報道に、「ようやく動き始めた」と喜んだのですが、実は市長の諮問機関である消費生活協議会には正式な諮問はされていないとのこと、協議会の自主的な意見交換の段階で報道もフライイング気味とのことでした。21世紀における消費者政策のグランドデザインを明示した「消費者基本法」が施行されたのは2004年(平成16年)6月、これまで消費者保護を前提に掲げた「消費者保護基本法」の役割は終わり、消費者と事業者との間にある情報力や交渉力などの格差の上に立って、「消費者の権利」の尊重、消費者の「自立の支援」など新しい基本理念をもつ消費者基本法の時代が始まりました。地方公共団体には新しい消費者政策を進める責務があるともされています。したがって、中核市である長野市においても、施策の基本となる条例を改定し、時代に合致した消費者行政の展開が求められるところとなっています。
2)基本法の制定を受けた自治体における条例改定は、東京都を皮切りに政令市レベルで先行し、中核市でも条例制定が進みつつあります。長野県でも条例の見直しが始まっていますが、わが長野市において、消費者の権利を柱に現行の「長野市消費生活の安定及び向上に関する条例」を早期に全面改訂し、消費者行政の充実を図るべきです。先の協議会に正式に諮問し、具体化を急ぐべきと考えます。いかがですか。
(3)次に、消費者生活センターの機能強化について質問します。消費生活相談はH16年度の6575件をピークに減少傾向にあるようです。葉書などによる「架空請求」の相談の減少によるものと思われますが、一方で訪問販売による被害や高齢者や障害者を狙った被害、ヤミ金被害が増加し、手を変え品を変え、手口はより巧妙、複雑になっているといわれています。また、ガス湯沸かし器やシュレッダーなど身近な生活用品が引き起こす重大事故が後を絶たない中、生活で用いる製品が消費者に危害を及ぼすのを防ぐために制定された消費生活用製品安全法が、事業者への報告義務付けなど改正され、5月に施行されます。今後、消費者が製品の安全にかかわる情報に触れる機会が増すことは間違いなく、事故にあった消費者が身近な消費生活センターに通報し、重大事故の被害拡大を防止する、そうした役割もセンターに求められるところとなっています。
(4)国民生活センターでは、製品事故を含めて、全国各地の苦情や相談をオンラインで蓄積するデータベース「PIO−NET(パイオネット)」を整備しています。苦情・相談の内容と対応、そして結果をまとめ蓄積されているデータベースで、全国の状況がわかり、トラブル防止、被害拡大の防止を図る役割を担っています。このパイオネットには、中核市37市のうち31市が参加、全国で385市が登録しています。中核市である県都・長野市がいち早く参加・登録し、国民生活センターと連携し、相談の全国事例・解決事例に学びながら、市民・消費者の側に立った相談体制をより充実させることを望みますが、所見と対応を伺います。
五つ目は、《人権同和政策課の将来について》です。
(1)保健福祉部の人権同和対策課と教育委員会の人権同和教育課を保健福祉部に統合し「人権同和政策課」とする組織機構改編が準備されています。昨年の3月議会で私は部落差別問題を柱にしつつ、女性差別、男女共同参画、障害者差別、外国人差別、家庭内暴力、子どもの人権、高齢者虐待などなど人権問題に主体的に取り組んでいく上で、専門部署の一本化を提案しました。そうした点から見ると今回の対応は、、人権同和政策課という名称で市長部局に人権に関する窓口を一本化すること自体を評価するものですが、なぜ保健福祉部管轄なのか、極めて中途半端であり人権教育・啓発の取り組みが後退してしまうのではないかとの危惧をぬぐえません。人権同和教育は憲法で保障された基本的人権の尊重や自由・平等の精神を具現化する柱です。かつ、学校教育、公民館などの社会教育・地域教育、家庭における教育、そして企業の取り組みなど多岐にわたり総合的に展開されてこそ効果をあげることができます。これを新しく保健福祉部に教育委員会から「人」を補助出向させて対応する手法は、寄り合い所帯の弊害を生むのではないか、施策の展開という意味で「統合」ではなく「分散」につながってしまうのではないか大変危惧します。
(2)そこで、人権同和政策の展開を「部」または「局」として市長直轄のセクションをつくり、人権同和施策を教育・啓発を柱に総合的に展開する組織機構改編とすべきと申し上げたい。今回の改編措置は一旦棚上げし、教育・啓発を柱とする人権同和政策の将来ビジョンを明らかにする中で機構改革を行うべきと考えますが、所見と対応を伺います。
最後に、《成人学校の受講料の値上げ問題について》質問します。
(1)今回、財政構造改革プログラムによる「適正な受益者負担」を理由に、使用料や受講料などの値上げ案が提案されています。ここでは市立公民館での成人学校を取り上げますが、1学期・受講料を4300円から8000円に値上げする、経過措置として19年度は6000円、20年度は7000円にするとしています。二つの問題があります。一つは、既に3月1日付の「広報ながの」に、「予定」と断りを入れているとはいえ、議会の議決前に「値上げ受講料」を市民に示しているという問題です。二つは中味で、2倍近い値上げであること、経過措置である新年度の6000円を見ても4割の値上げとなる問題です。1年で12900円の負担が24000円になるというのは、市民に過度の負担を強いることになります。1学期8000円の根拠は何なのか明らかにしてください。
(2)「何とかならないの。成人学校を楽しみにしていたけど、年金生活者ではもう行けないよ」といったあきらめの声が寄せられています。お金に余裕のある人しか参加できない成人学校では、「広報ながの」にも書かれている「出会い・ふれあい・学びあいの輪」である成人学校本来の趣旨が死んでしまいます。生活圏域の中で参加する生涯教育・公民館の成人学校は、民間のカルチャースクールと目的が違います。成人学校の受講料の値上げについて、原案に賛成することはできません。せめて、過度の負担を強いないよう抜本的に下方修正し再提案することを求めます。明快な答弁を求め、質問を終わります。
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