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06年8月15日記
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適正な議員定数とは?削減は必要なのか?


1.長野市議会の議員定数を削減する動きが急!

9月議会に、議員定数を削減する条例が提案される動きが強まっています。長野市議会の議員定数は条例では42人、合併特例により4人が増員され、現在、市議会は議員46人で構成されています。来年9月の市議改選期においては、合併特例が適用されないため、定数を削減しなければ条例定数42議席で選挙が行われることになります。

しかし、昨年9月の市議会で「議会も行財政改革しなければならない。強い市民の要望もあり、議員定数の削減を検討すべき」との意見を受け「議員定数等調査研究特別委員会」が設置され、この1年間、県内外の自治体議会の状況調査を経て、委員会として定数削減を確認、削減の幅について最終的な検討がされています。

2.そもそも議員定数は?

議員の定数は地方自治法第91条で人口を基準に上限数が定められ、自治体の議会の議員の定数は条例で定めることになっています。長野市の場合は「30万以上50万未満」にあたり、法定数は46人です。

全国的には、議員定数の削減が行われてきています。とりわけ地方自治体の財政難が顕著となり、国の三位一体改革でより厳しさが増す中、平成の大合併の動きも手伝い、ここ数年では「財政が厳しいのだから、議員定数の削減は当然のこと」とする風潮が強まっています。長野市議会も法定数からは4削減する42人となっているわけです。

3.県内、全国から見ると?

人口1万人あたりの議員数、議員1人あたりの人口といった観点から比較してみると、長野市は減員率8.7%、人口1万人あたりの議員数は1.11、議員1人あたりの人口は9012人です。県内19市の平均は、減員率21.1%、人口1万人あたりの議員数が2.68、議員1人あたりの人口は3732人で、とりわけて長野市の議員定数が多いという状況にはありません。これを長野市と同規模となる全国の中核市(人口30万人以上で政令都市を除く都市、全国で36市)レベルで見ると、平均で減員率9.3%、人口1万人あたりの議員数は1.06人、議員1人あたりの人口は9467人と、平均をやや上回っている状況といえます。こうしたことから、特別委員会では「せめて中核市の平均に合わせる定数に」「議員1人あたり人口が1万人の定数に」との意見が大勢で、事実上、マイナス2の40人か、マイナス4の38人か、といった大詰めの山場を迎えているようです。

 [表1=県内の市及び中核市の議員定数の現状]

都市名

人口(17年国調)

法定上限数

条例数

減員率

人口1万人当たり議員数

議員1人当たり人口

長野市

378,495

46

42

8.7%

1.11

9,012

松本市

227,597

38

34

10.5%

1.49

6,694

飯田市

108,628

34

27

20.6%

2.49

4,023

諏訪市

53,236

30

15

50.0%

2.82

3,549

駒ヶ根市

34,420

26

15

42.3%

4.36

2,295

19市の平均

90,155

-

24.2

21.1%

2.68

3,732

中核市の平均

394,854

-

41.7

9.3%

1.06

9,467

 *地方自治法での議員定数の基準となる人口は、直近の国勢調査によります。
 *H18年8月1日現在の人口は382,898人です


[表2=議員の定数を減少した場合の人口1万人当たり議員数等・長野市の試算]

条例
定数

法上限数との差

減員率

現行との差

人口1万人当たり議員数

議員1人当たり人口

同水準の都市

*2

42

△4

8.7%

0

1.11

9,012

富山市1.09人

岡崎市1.10人

和歌山市1.12人

40

△6

13.0%

△2

1.06

9,462

横須賀市1.06人

岐阜市1.06人

豊橋市1.07人

38

△8

17.4%

△4

1.00

9,960

大分市0.99人

旭川市1.01人

36

*1

△10

21.7%

△6

0.95

10,514

高松市0.96人

長崎市0.97人

豊田市0.97人

34

△12

26.1%

△8

0.90

11,132

金沢市0.88人

倉敷市0.92人

32

△14

30.4%

△10

0.85

11,828

福山市0.83人

*1 条例定数36人は、人口30万以上50万未満の中核市では、旭川市及び高槻市と並んで最小となる。

*2 人口1万人当たりの議員数で比較したもの。人口30万以上50万未満の都市。

4.適正な議員定数とは?「民意の反映」と「民意の集中」

「適正な議員定数とは何人か」と問われれば、私は地方自治法が定める上限数が基本であり適正である、この範囲内で「多ければ多いほど良い」という風に考えています。議員一人当たりの人口が少ないほど、少数意見を含め民意が議会に反映されることになるからです。例えば人口1万人に1人の議員と人口5千人に1人の議員を比べて見ましょう。実際の選挙を考えればわかりますが、議員一人当たりの人口が少なければ少ないほど、いわゆる当選に必要な得票が少なくなりますから、結果としてより密接な市民の声を議会に反映する手立てとなります。逆に人口1万人に1人の議員では、当選に必要な得票が大きくなり、組織的・地域的に磐石な議員だけが選ばれることになります。大きな声という意味で民意は集中されますが、小さな声、声なき声が反映されなくなる危険性をはらんでいます。

市議会議員は、○○地域の代表という面で地域性が強いのは事実です。一方で長野市全体のあり方をグローバルに捉え、検証・チェックする役割こそが果たされなければなりません。保守の立場、進歩的な立場、革新的な立場でそれぞれ見方や評価が異なるのが地方政治の現実です。さまざまな立場、意見を代表する議員で構成される議会だからこそ、市行政に対する健全なチェック機能を果たせることにつながります。

5.合併を踏まえ、次期選挙は定数現状維持がベターだと考えるが…

前述したとおり、長野市議会は合併特例で合併町村ごとに小選挙区で選挙を行い、4人の議員が増員され、現在46人で構成されています。条例定数の42人で選挙を行うとしても、4人の減となるわけです。合併した新しい長野市の課題は新市としての一体感を醸成することにあります。一体感の醸成には、旧町村にとって新市の議会に代表が存在し、合併町村における施策に自らの声が生きていると実感できることが大きな要素となります。人口だけで見ると、合併町村の代表が議席を得るには、豊野を除き大変厳しい状況にあることがわかります(下表参照)。因みに中核市においては、合併定数特例をH23年または24年の選挙(次の次の選挙まで)まで継続することを決めている自治体が8自治体(函館市・高松市・高知市・豊田市など)あります。合併町村の声を市議会に、市政に反映させようとする試みです。長野市の場合、議員の定数特例採用は合併協議会の中でH19年の9月までと決めてきたため、今からこれを延長することは困難です。だとするなら、現状の中で「合併による新市の一体感」を議会サイドでも保障して行く道は、次の選挙は定数を削減せず、せめて条例定数の42人で行い、削減に関しては来年の改選以降、改めて検討し結論を得ることがベターではないかと考えています。

旧町村

人口(18/8/1現在)

豊野

10,243

鬼無里

2,084

戸隠

4,687

大岡

1,468

18,482

とはいえ、こうした考え方は議会内では少数派です。所属会派の中でも議論は2分しています。「議員の数が多すぎる」との市民の皆さんの声は、少なくとも私は耳にしていません。議員の資質を問う声はありますが…。42人を40人とするか38人とするか、いずれかの流れが大勢となっている今日、どうすべきか、正直、悩むところです。議員の定数は民意の反映の基準です。皆さんはどのようにお考えでしょうか。


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