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06年7月18日
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06年6月議会の焦点・論点(その1) 
 市議会6月定例会が6月27日、市が提出した総額6億6200万円余の補正予算案をはじめ、追加議案を含む23の議案をすべて原案通り可決し閉会しました。市提出の議案には賛成しました。
 6月議会で焦点となった課題(多少、主観的ですが)は次の通り。順次まとめ報告していきます。

◆ケーブルテレビ施設整備事業の見直し、市独自の整備が見送りに。民間頼みで情報格差は解消できるか?
◆再開発事業「長野銀座D−1地区」の「TOiGO(トィーゴ)パーキング」(431台)のうち150台分を市が2億1690万円で買い上げ取得へ
◆苦渋の選択!市清掃センターの焼却炉主要設備のオーバーホール工事請負契約、指名停止業者と。4億900万円の随意契約、日立造船は「誓約書」を提出。2度あることが3度あってはならない!
◆「1200万人観光交流推進プラン」…NHK大河ドラマ「風林火山」を弾みに
◆市営住宅にも指定管理者制度導入へ。滞納家賃徴収に「報奨金」盛り込む!
◆旧共和小学校の後利用に「黒木学園」が名乗り
◆「教育基本法の改悪に反対し慎重審議を求める請願」は賛成少数で否決に!
◆議員提案の「米国産牛肉の輸入再開に関する意見書」「義務教育費国庫負担制度の堅持を求める意見書」は全員賛成で可決


 まずは第一弾として「市清掃センター、指名停止業者との随意契約」の問題について報告します。

市清掃センター、指名停止中の日立造船と随意契約。何が問題なのか?
 『長野市、指名停止業者と契約、清掃施設補修2年連続で、「固有の技術」理由に』…6月28日付けの信濃毎日新聞が4段抜き見出しで大きく報道しました。

 これは、6月議会の議案「工事請負契約(清掃センター焼却炉収容設備オーバーホール他工事)の締結について」に関わる問題です。契約価格は4億950万円です。

 長野市清掃センターは1982年(S57)1月の稼動から24年が経過、1999年(H11)から3年間かけてダイオキシン対策などの総合的な排ガス処理対策を講じ現在に至っていますが、いわゆる「老朽化」が課題で、今後、長野広域連合で建設を計画する新しいごみ焼却施設に引き継がれることになっています。予備炉などの代替施設がないことから、新しい焼却施設が建設されるまで、現施設の延命を図ることが必要で、そのためにここ数年、オーバーホール工事を施し補修しなければならない現状にあります。

 現在の清掃センターの焼却施設は日立造船のプラントで、メンテナンスも日立造船と随意契約で行ってきました。問題はこの日立造船です。昨年は同社が橋梁談合に関わり、市は8ヶ月の指名停止処分に、さらに今年になってからの大阪府阪南市におけるし尿汚泥施設をめぐる談合事件で独占禁止法違反の容疑で告発され、今後、裁判となっていくものです。市はこれにより11ヶ月の指名停止を決めたのですが、指名停止にもかかわらず、当該の日立造船と随意契約を結ぶ議案として提出されたわけです。

■市民ネット、一般質問で正す

 6月議会の一般質問で、所属する市民ネットから、「日立造船は昨年の橋梁談合に加え、今年にはし尿汚泥処理施設での談合で既に独占禁止法違反で刑事告発されている。法治国家において、自治体は違法行為に対し毅然たる態度で臨むべきである。2年連続で指名停止業者との随意契約は倫理観にかけた行為といわなければならない。指名停止業者との随意契約をやめ、指名競争入札などで他の業者に発注、契約すべきではないか」と正しました。

 答弁にたった環境部長は「日立造船の談合事件は遺憾であると同時に、ごみ焼却施設の維持管理を委託している自治体への背信行為であり法的にも社会的にも厳しく措置されなければならない」との認識を示した上で「日立造船との仮契約はやむをえない苦渋の選択である」とし理解を求めました。苦渋の選択をせざるを得ない理由として、一つはごみ焼却施設が性能発注方式であり、プラントメーカーの独自の技術に依拠せざるを得ないこと、二つは年間11万トンのごみ処理を行う現施設は、新しい焼却施設が完成するまでの8年間、稼動を維持する必要があり、他社が引き継いだ場合、工事が長期化し処理能力が追いつかなくなり市民生活に多大な影響が出ることなどから、メンテナンス工事を先延ばしすることができないこと、三つは他のプラントメーカーは営業本体とメンテナンス部門が別法人なっており、営業本体への指名停止の影響を受けないが、日立造船の場合、メンテナンス部門が別法人になっておらず、一体で指名停止となっていること、などをあげました。

 この問題は、ごみ焼却施設に関わる福祉環境委員会と契約に関わる総務委員会で論議され、福祉環境委員会では「ごみを安定的に処理することは、市民の生活環境を守る上で大変重要なことでありますので、やむを得ず契約することに際しては、今後、当該事業者が法令違反をしないよう抑制するため、早急に誓約書を提出させることを要望」するとし、総務委員会は「現行の制度下では、特殊技術を有する事業者である限り、一度契約してしまえば、指名停止中であっても、その後のメンテナンス工事を受注質告げることができることとなり、極めて好ましくない状況」にあるとし「今後、同様の事態が発生しないよう、入札条件のあり方を含め、より有効な方策がないか検討するよう要望」する旨をまとめ、これらの委員長報告が本会議で採択されました。

苦渋の選択!?やむを得ず議案には賛成

 本会議で、私はこの議案に賛成しました。ごみ処理を停滞させることはできないと考えたからです。しかし、悪質な談合事件によって指名停止というペナルティを事業者に課しても、結果ペナルティにならない現実には釈然としませんし、憤りは禁じ得ません。福祉環境委員会が指摘した「誓約書」が日立造船から提出されましたが、「独占禁止法違反で大阪地方検察庁から起訴されたことについては、長野市に多大な心配と迷惑をかけ深くお詫びする…コンプライアンス(法令遵守)経営の徹底に向けあらゆる諸施策を講じる」とするもので、当たり前のことを書いているに過ぎず、度重なる法令違反に対する真摯な反省の姿勢はうかがい知れません。因みに、「誓約書」は、東京都などが指名停止中の日立造船と随意契約を行う際の誓約書の前例に倣ったもののようです。

松本市の清掃工場(広域で運営)では随意契約を競争入札に切り替えて対応していますが、結果として「日立造船」が落札しているそうです。昨年の橋梁談合では同様に指名停止し、指名競争入札を実施、しかし予定価格より1億円くらい高い入札状況で、結局、費用対効果から落札を断念し、「日立」と随契せざるを得なかったとのことです。今年のメンテナンス工事はこれから検討するそうですが、指名停止処分20ヶ月(松本市の場合)ですから、昨年と同様の対応になるのではと推察しています。

 少なくとも、随意契約から指名競争入札に切り替えている点は透明性の観点から行政の基本姿勢として評価できると思います。ただし、結果が伴わない点には、ごみプラント業界の「独自の技術」が壁になっているといえます。現場からは「主要な部分は随意契約せざるを得ないのがプラントの現実」「プラントメーカーの保守点検が安全性の面で一番信頼できる」との率直な声が返ってきます。確かにその通りでしょう。

■何が課題なのか? 二度あることが三度あってはならない!

 「なぜ、指名停止中の業者と契約できるのか」…「長野市建設工事等入札参加者指名停止等措置基準」では「市長は、指名停止の期間中の有資格者を競争入札に参加させ、または随意契約の相手方としない」ことを定めていますが、「但し書」で「災害緊急時における建設工事または特殊技術を要する建設工事等で特別な事由があると認めるときは、当該建設工事等に限り、この限りではない」と例外規定をおいています。今回の措置は、この但し書の「特殊技術を要する建設工事」に該当するとしたものです。法令には原則だけでなく絶えず「例外」が書かれているものです。

これはこれで仕様がないとして、問題は前述したようにペナルティがペナルティにならないシステム上の問題をどのように克服するのか、にあります。

入札において、業者が法令違反を起こした場合で、行政が指名停止等の処分を行い契約の履行が不可能な場合において、当該業者は行政が被る損害を賠償しなければならないとする、「法令遵守違反規定」を入札条件に設定する方法は取れないのでしょうか。研究してみたいと思います。少なくとも、日常的に随意契約を改め競争入札に切り替えていくことは必要です。

また、自治体において、ごみ焼却プラントなどは専門性の高い技術が求められることから、職員の専門性の向上を図ることです。プラント技術に熟知した職員を養成するほか、例えば、「任期付職員」として高度な専門性を有する人材を確保し対応することも一つの方策です。

さらに、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では、「県は、市町村に対し必要な技術的援助を与えることに努める」ことを規定しており、この考え方に沿って、長野県における市町村への技術支援のシステム化も検討されなければなりません。さらに国の責任も果たされなければなりません。

 予備炉を建設し、いざというときに活用するという道(今回も、予備炉があれば競争に有札により新しい業者に発注することも可能となる)も論理的にはありえます。しかしながら、今日の財政の厳しさを考えると「数十億円プラスして建設」というのは現実的ではありません。結局のところ、ごみ排出量の削減が課題となります。

■新しいごみ焼却施設のプラントメーカーは?

 長野広域連合のごみ焼却施設建設は、建設地住民の合意形成の大きな山場を迎えていますが、並行して、どんな焼却施設とするのか、どんな技術が最善なのかが検討されています。ごみ焼却施設をめぐる談合事件があとを経たない今日、50億円を上回る契約となるだけに、焼却施設のプラントメーカーの選定・決定方法について、透明性ある対応を求めていくことも重要となっています。

[廃棄物の処理及び清掃に関する法律]

第4条(国及び地方公共団体の責務)

1  市町村は、その区域内における一般廃棄物の減量に関し住民の自主的な活動の促進を図り、及び一般廃棄物の適正な処理に必要な措置を講ずるよう努めるとともに、一般廃棄物の処理に関する事業の実施に当たっては、職員の資質の向上、施設の整備及び作業方法の改善を図る等その能率的な運営に努めなければならない。

2  都道府県は、市町村に対し、前項の責務が十分に果たされるように必要な技術的援助を与えることに努めるとともに、当該都道府県の区域内における産業廃棄物の状況をはあくし、産業廃棄物の適正な処理が行なわれるように必要な措置を講ずることに努めなければならない。

3  国は、廃棄物に関する情報の収集、整理及び活用並びに廃棄物の処理に関する技術開発の推進を図り、並びに国内における廃棄物の適正な処理に支障が生じないよう適切な措置を講ずるとともに、市町村及び都道府県に対し、前二項の責務が十分に果たされるように必要な技術的及び財政的援助を与えること並びに広域的な見地からの調整を行うことに努めなければならない。

 国、都道府県及び市町村は、廃棄物の排出を抑制し、及びその適正な処理を確保するため、これらに関する国民及び事業者の意識の啓発を図るよう努めなければならない。


7月21日に仙台市の松森清掃工場を会派で視察します。松森工場は昨年7月、三菱重工のプラントで稼動した新しいごみ焼却施設。試運転段階でダイオキシンが発生、本格稼動が3ヶ月遅れるというトラブルを起こしています。また、周辺関連施設としてPFI方式で整備したスポーツ施設「スポパーク松森」のプールでは、昨年8月の宮城沖地震の際に天井落下事故が発生、この事故からPFI方式による公共サービスの安全性確保に関する調査検討に取り組まれています。視察後、改めて報告します。



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