12月9日、政府は14日に期限切れを迎える自衛隊のイラク派遣を1年間延長するため、イラク特措法に基づく基本計画の変更を閣議決定しました。国民の6割以上が派遣延長に明確に反対しているにもかかわらず、最低限の説明責任すら放棄し、閣議だけで派遣延長を決定したことはまさに暴挙です。
小泉首相は、日米首脳会談で「独自の支援」を継続するとして事実上の派遣延長をブッシュ大統領に約束しながら、国会では派遣延長についてギリギリまで検討するような曖昧な答弁を繰り返してきました。また野党が提出のイラク特措法廃止法案の採決さえ拒否するなど国会での議論は徹底的に回避する一方、大野防衛庁長官や与党幹事長らによる「おざなり」のサマワ訪問で「治安は安定」とうそぶき、あたかも既定路線のように臨時国会の閉会を待って閣議決定したことは、国会軽視・国民無視の姿勢そのものに他なりません。
開戦時にイラクに大量破壊兵器は存在せず、アナン国連事務総長もイラク戦争の違法性を指摘しました。「大義」や正当性のカケラもない戦争によって、10万人を超えるイラク市民が犠牲となり、5人の日本人の尊い生命が奪われた事実も、重く受け止めなければなりません。テロは絶対に許されませんが、「テロとの闘い」を名目に軍事力の行使だけに突き進むことは、イラクの安定どころか報復と憎悪を拡大させるだけです。政府は、戦争を無条件に支持して自衛隊を無理やりに多国籍軍に参加させてきた判断の誤りが、その一端を担っている現実を直視すべきです。
小泉首相は、国会答弁で「自衛隊の行くところが非戦闘地域だ」と居直りましたが、すでにサマワの自衛隊宿営地の内外には8回にわたって砲弾が撃ち込まれています。また米英軍による先のファルージャ掃討作戦では、イラク全土に非常事態宣言が発せられたことからも、イラク全土が戦闘状態にあることは誰の目にも明らかです。自衛隊の活動を「非戦闘地域」に限定したイラク特措法に照らしてさえ、自衛隊がイラクで活動する根拠は失われています。自衛隊を速やかに撤退させることこそが唯一の選択肢なのです。
開戦以後、すでに撤退したスペインやフィリピンに続き、オランダ、ハンガリー、チェコ、ルーマニア、ポルトガルなどの国々が次々とイラクからの撤退方針を決めました。国際社会は米英両軍主導の治安維持に強い疑問を投げかけているのです。この期におよんで派遣延長を強行することは、米国の単独行動主義に追随し、それを補完する以外の何ものでもありません。政府は自衛隊をイラクから撤退させ、国連を中心とした国際協調に基づくイラク復興支援への転換にこそ、全力を上げるべきであると考えます。
香田証生さんがイラクで「人質」になったときに、小泉首相は「自衛隊は撤退しない。テロには屈しない」と冷たく語りました。この4日後に香田さんは殺害されました。日本が軍隊を派遣することなく民生の復興支援に徹していれば、この事件は起きませんでした。香田さんを見殺しにしたのは小泉首相に他なりません。
もうこれ以上、人々の命が失われるのを平然と見過ごすことはできません。占領をやめない限りイラクに平和も復興もありえないのです。「撤退させよう自衛隊、終わらせようイラク占領」を声を大にして訴えます。
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