21日、22日と自治体議会政策学会(会長=竹下譲・拓殖大学地方政治センター長)の第15期自治政策講座が東京・両国で開かれ受講してきました。政務活動費を使った政策研修です。
長野市議会からは公明党市議団と無所属の手塚議員も参加していました。
自治体議会政策学会の講座は講師陣がなかなか魅力的で、これまでも参加してきています。
今回のテーマは「持続可能な社会~誰もが暮らしやすい社会づくりと自治体」で5つの講義が内容です。
第1講義 貧困と社会的排除に向き合う~社会的包摂と自治体の責務~
岡部卓 首都大学東京大学院教授
第2講義 腰痛が社会の脅威に~少子高齢社会を支える技術開発「軽労化」という発想~
田中孝之 北海道大学大学院准教授
第3講義 情報格差社会を生き抜く力~サイバーリテラシーと自治体の責務~
矢野直明 サイバーリテラシー研究所代表
第4講義 誰もが使いやすい安全なまちづくり~ユニバーサルデザインの基本と自治体の役割~
川内美彦 東洋大学教授/一級建築士
第5講義 再生可能エネルギーで地産地消の地域づくり~エコビレッジ構想と防災計画
糸長浩司 日本大学教授/一級建築士
まずは第1講義と第2講義のポイントを紹介。
★貧困と社会的排除にどう向き合うか
第1講義は、参院選直前の政局混乱から廃案となった生活困窮者自立支援法案と生活保護法改正案の課題です。生活保護では既に給付の削減だけが8月から先行しています。
最後のセーフティネットとされる生活保護の改正案では、申請手続きの厳格化、扶養義務の強化などが打ち出され、真に生活保護を必要とする生活困窮者のセーフティネットとならないなどの問題点が指摘されています。
また、生活困窮者自立支援法では、自立相談支援事業の実施と住宅確保給付金の支給が国が4分の3を支援する必須事業とされているものの、就労に必要な訓練の実施や住居を持たない人への宿泊場所の提供、生活困窮家庭の子どもへの学習補助など重要整理高い事業は任意とされ、しかも国の補助率は3分の2、2分の1と低いものになっています。
いずれも問題点が多い法案なのですが、もともとは2013年1月の「生活困窮者の生活支援にあり方に関する特別部会報告書」(厚労省・社会保障審議会)が起点となっており、この厚労省の審議委員を務めている岡部教授は、「手薄であった低所得者対策が拡充されていく点では一定の意義がある」とします。
その上で、自治体は、「貧困・低所得問題」を行政の業務に位置づける視点、社会的包摂という観点から、行政の仕事は「制度適用者への対応に過ぎず、制度の狭間を埋める視点」が必要であるとします。
「貧困と社会的排除に向き合い自治体が業務を展開していくためには、自治体が先導して市民、民、行政の三者が手を携えること(=「新しい公共」に取り組むこと)が必要であり、貧困と社会的排除を根絶するというミッション(社会的使命)を自覚し、新たな福祉社会を創造することが重要」と強調します。
総論に異論は全くありませんが、各論になると「どうなのかな」という疑問も残ります。
秋の通常国会の大きな争点になります。法改正(改悪?)を見越しながら、自治体の役割と仕事についてまとめていくことが大事です。長野市政上の喫緊の課題の一つです。
★「軽労化」なる新しい発想
第2講義は、介護や農業などのつらい人の手による作業で、身体にかかる負担と疲労を減少させる「軽労化」という新しい発想で開発された「スマートスーツ」の紹介、「軽労化社会システムの意義と創造」についてです。
耳慣れない「軽労化」という言葉ですが、「高齢社会にあって、いつまでも生きがいをもって働き、楽しく暮らせる社会を支える技術、この技術で労働意欲のある人の身体機能をサポートする」といった発想です。率直に面白いと感じます。
田中准教授の専門はロボットで、モーター付きの軽労化スマートスーツの開発に始まり、さらにロボットに必須なモーターやセンサー、コントロール機能を除外し、独自開発のゴムのみによる「スマートスーツ」を開発、試験販売の段階に入っている「軽労化」技術です。一着39,900円。試験販売とはいえ、実用化への「壁」になるのではと思います。
試着の時間があり、実際に農作業用の「スマートスーツ」を着用してみました。中腰・前かがみの状態から起き上がる時に負担が軽くなります。筋力負担の軽減は筋力減退につながらないよう25%に設定しているそうです。腰痛への対応策として有効であると思われます。機械ロボットとの組み合わせで人力が不可欠な作業への補助具として、特に介護職場での活用が期待されそうです。
雪かき時の腰への負担を軽減する「UDスコップ」も開発されています。柄部にS字の曲げ加工を施すことにより、雪をすくい上げる時の深い前屈姿勢を浅くし、重たい雪を体に近い位置ですくうことができるとされます。
自治体ですぐに“どうこうできる”というものではありませんが、高齢社会を支える発想と技術には興味が広がります。