屋代線…自治協の請願、継続審査に

  「何も言うことがない。あきれている。まとめてもらおうと請願書を修正したにもかかわらず、採択にならない。議会とは一体何なんだという不信感。そして住民自治協議会とは何なんだ、疑問というより怒りを覚える」(松代)

 「継続審査は事実上の否定だ。公的支援による鉄路の存続を検討してほしいというのが請願の趣旨、検討すらしないということは理解しがたい」(若穂)

 松代、若穂両住民自治協議会から提出されていた「屋代線の実証実験の継続を求める請願」が、総務委員会で賛成多数で「継続審査」となった結果を受けての、両自治協の事務局長の言葉だ。

 かかる請願について、採択できるよう努力してきた一人として、力不足を痛感するとともに、議会の存在意義の根幹と議会への信頼が問われていると全議員に訴えたい。

 総務委員会で、継続審査を主張した理由はおおよそ三つ。一つは、法定協議会の決定を尊重しなければならない委員が、請願人となり、法定協への意見書提出を求めることは問題であること。二つは、法定協の廃止決定は重く、既に長野電鉄が廃止を表明している中で、「長野電鉄屋代線」という呼称や実証実験の継続は無理があること。三つに、もう少し様子を見て深い議論をする必要があること。

 これら三つの理由は、継続審査にしなければならない理由になっていない。一つに、法定協議会の決定事項に対する尊重義務は、国民の請願権を制限するものではないこと、しかも住民を代表する自治協議会から提出された請願であることを重く受け止める必要があること。二つに、長野電鉄屋代線は固有名詞であって、廃止届が出されようとも来年3月末までは屋代線は運行されることは明白、屁理屈に過ぎないこと。三つに、様子を見るということはバス代替の既成事実化を容認することにほかならないこと。結局のところ、「継続審査」という名の「不採択」に過ぎないのだ。「自治協からの請願だけに無碍にはできない。本来は不採択なのだが、継続審査にしておこう」との本音が透けて見えてくる。

 委員会では、採択する方向に向かってなお努力しようと、暫時休憩とする中で、自治協の代表を交えて請願書の訂正が協議され、結果、訂正後の請願は、請願趣旨から「長野電鉄」の字句が削除、「屋代線」は「鉄路」に置き換え、そして「活性化協議会に対する意見書の提出」部分の削除、さらに請願事項において「屋代線存続に向けた実証実験の継続」部分を削除し、「住民の意向を尊重し、後期支援による新しい運営スキームによる鉄路の存続にについて検討すること」にまとめられた。

 これでまとまったものと思ったのも束の間、再開された委員会では、修正された請願について、なお継続審査にしなければならない理由が一切述べられることなく、継続審査の発議に基づき、決を採り、委員長を除く9人の内5人が賛成し、継続審査となった。継続審査の理由は何一つ議論されていない、どうやって委員長報告をするつもりなのだろうか。

 結局のところ、法定協議会の廃止決定を優先尊重するのか、沿線利用者を代表する住民自治協議会の民意を優先尊重するのか、議会としての基本スタンスが問われた問題なのだ。法定協議会の決定が重いこと自体を否定はしないが全てではない。何故なら、協議会の規約、構成、協議の進め方について疑義は残ったままであり、沿線代表は受け入れがたいと一貫して主張し続けているからだ。行政には尊重義務があっても、議会は拘束されていないのである。行政と議会の対応が異なる事態の中で、住民の意思を汲みながら着陸点を探すことが政治の仕事である。廃止届が提出されてから鉄路が再生された事例は多くある。鉄路存続への可能性を検討する道を議会自らが閉ざしてはならない。採択して「深い議論」をすべきである。

 請願事項を修正し、「検討することを求める」ことすら認めようとしない議会は、一体何なのか、自治協役員の言葉をかみしめたい。

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