25日、3月市議会は、総額1556億円の新年度当初予算案をはじめ、人権擁護委員などの人事案を含め市が提出した65議案すべてを可決・同意して閉会しました。
新第一庁舎・新市民会館の事業費の増大と水道料金の値上げについて、賛成するか、最後まで悩みました。会派内で意見交換し、最終的に賛成することにしました。
庁舎・市民会館の建設事業費や人権同和事業費などを減額する修正案が共産党市議団等から提出されましたが、同意できる内容ではないため、反対しました。
★賛成討論で、苦言を呈す
しかし、予算執行にあたり市行政に苦言を呈する必要があると考え、当初予算案・原案に対する賛成討論を行いました。
以下、その内容です。
33番、市民ネット、布目裕喜雄です。
議案第1号 平成25年度長野市一般会計予算・原案に賛成の立場で討論します。
各常任委員会・委員長報告では、新年度予算案及びその執行について、数多くの要望事項が指摘されました。要望された事項について、誠意ある対応方をまずは求めておきます。
また、難病患者への見舞金給付制度の廃止について、請願は残念ながら否決されましたが、特定疾患や肝炎患者の皆さんの苦しい闘病生活に想いをはせ、心を砕き、見舞金を復活されることをぜひ再検討されることを強く求めたいと思います。
新年度予算案は、大規模プロジェクト事業・施設建設事業の本格化に伴い、投資的経費が増大していることが最大の特徴です。
10の建設プロジェクトについて、いずれも個別には課題を残しているものの、必要な施設建設であると受け止めています。しかしながら、建設ラッシュのもとで借金の返済額を上回る借金をしなければならない局面を迎えます。これまで以上に、将来負担を見極めつつ、財政運営に規律ある秩序が保持されることが重要です。同時に、市民負担について、丁寧でわかりやすい説明をするとともに、しっかりとした市民理解と合意を得ていくことも重要です。
ましてや、建設事業の推進のために、福祉や教育分野、生活環境の改善など市民生活に不可欠な施策にしわ寄せされることがあってはならないということも、敢えて指摘しておかなければなりません。
さて、建設事業が本格化するということは、大規模な工事入札が行われるということです。これから10年間で900億円投資することになります。今や、長野市は全国から注目される「建設ラッシュ都市」です。故に、緊張感を持って、公正・公平な入札を図り、予算の適正な執行に努めることが肝要となっています。
こうした観点から、予算案に賛成する立場に立ちつつも、苦言を呈さなければなりません。
新第一庁舎・新市民会館の建設事業費の見直しについてです。市民に約束してきた当初の134億円の事業費は、17億円増の151億円に膨れ上がり、新年度予算編成にあたり全体事業費として見直されました。
総務委員会委員長報告では、事業費見直しの時期等が論点の一つとして報告されていましたが、もう少し論点整理されたほうが、議会にとっても市民にとっても、わかりやすかったのではと思います。
工区分割発注の実施や地下2階への小ホールの設置、ホール面積の増など、追加要因による事業費の増加は、市民への新たな説明責任を前提にして、「止むを得ないもの」と理解します。では、追加要因がなかった場合、134億円の事業費のままで入札を迎えることができたのかと言えば、それは不可能だったのではないですか。134億円は落札ベースでの見込み額であり、いざ、入札となれば、予算ベースでの事業費見直しが必要となり、落札率等を勘案すれば約145億円くらいの事業費として見込む必要を余儀なくされたはずなのです。
つまり、134億円の事業費は、他市の類似施設の決算ベースでの建設費をもとに算出したものであり、このままでは、明らかに公正な入札を行えないため、事業費について正常化を図らざるを得なくなったということです。「イレギュラーな事業費提示であった」とは、そういうことでしょう。
このことを、率直に認め、市民に謝罪し、改めて事業の正常化を図る姿勢こそが求められているのではないでしょうか。一般質問で問いただしたかった点がここにあります。
市長は議会冒頭の施政方針で「建て替えの検討にあたり、現実の支出額である決算ベースで検討することが適切と判断」と述べる一方、「正確な情報提供に欠いた点をお詫びする」としました。
「適切な判断」との答弁には、明らかに「不適切な認識」があります。本会議での私の質問に、総務部長は「本体工事の発注を前にした時点で、134億円の事業費のままで進めることは困難な状況と判断したもので、無理な金額での設計は市の工事発注としても不適切である」としました。
「追加要因があるため」と説明したいのでしょうが、追加要因を除外しても、落札ベースで積み上げられた事業費では、公正な入札を図れない、公共工事の品質を確保できないことに、はたと気が付いたということでしょう。
「イレギュラーな事業費提示」とは「不正常な事業費提示」ということです。何故、イレギュラーなものになってしまったのか。
この点についても、私は「市民の理解を得ようとするあまり事業費を小さく見せようとする意図があったのではないか」と質問しました。総務部長は「そのような意図は全くない」と即座に否定しましたが、一方で「建物の概要が決まっていない段階では、現実の支出額に近い決算ベースの数字が適当と判断した」と繰り返し述べました。基本設計は建物の概要を示したものです。建物の概要が決まっていない段階というのは詭弁となってしまいます。
つじつまを合わせようとする行為は、結果として市民の理解を損なうことにつながります。このことを肝に銘じるべきでしょう。
従って、市側はこういうべきでしょう。「基本計画・基本設計段階で示した建設事業費134億円という数字は、行政が市民に向かって、あるいは外に向かって、示すべき事業費としては不正常で不適切な数字であり、建設事業の発注に際し、今回、追加要因に伴う事業費増と合わせ、総事業費の見直し・正常化を図らざるを得なくなった。市民に誤解を与え、予算の適正な執行という点において課題を残した点を率直に謝罪し、見直し・正常化された総事業費において、さらに今後、実施設計を詰める段階で、事業費の圧縮に努めたい」、という風に答弁し、市民の深い理解を求める謙虚な姿勢で臨むことが求められていると思います。
第一庁舎・市民会館の建て替えは建設場所をめぐり紆余曲折を経、現在地での合築に落ち着きました。そして、今回、事業費においても、紆余曲折を経て、新年度予算案の段階、事業の発注段階で正常化されたと受け止め、新年度予算案には賛成をします。
しかし、これで一件落着ではありません。市民の信頼を揺るがせたことを深く自覚し、改めて市民に対し説明責任を果たすことが必要でしょう。
さらに、これから相次ぐ公共工事の発注において、予算の適正な執行が阻害され、納税者である市民の利益が損なわれることがあってはなりません。
事業の発注・受注、工事の進捗のプロセスにおいて、ブラックボックスがないよう、透明性・客観性が担保されるとともに、適正な価格のもとで公共工事の品質が保持されるよう求めておきたいと思います。
このことを敢えて指摘し、第1号議案平成25年度長野市一般会計予算・原案に対する賛成討論とします。
★水道料金値上げ…「やむを得ず」と判断
水道料金を平均7.86%値上げする料金改定案について、老朽化した水道管の更新や耐震化を進め、安定して安全な飲料水の供給を続ける必要があることから、「料金改定はやむを得ないもの」と受け止め、賛成しました。
今年の6月からの料金値上げで、4年間据え置きとなるものです。
13㎜口径の一般家庭で使用水量10㎥あたり、1カ月1,396円から1,627円に、231円の値上げとなるものです。増加率は16.5%と、一般家庭には負担が重いものとなっています。
この案件は、既に3月18日の建設企業委員会(所属委員会です)で付託案件として審査されました。
工場やホテルなど大口利用者では増加率が6.3%から0.5%とされ、一般家庭に比べ低く抑えられています。「使用水量が多く料金負担が大きい事業者が安定して事業を行えるよう配慮が必要」とされた答申を踏まえたものになっています。
大口の水道使用者の料金を一般家庭が肩代わりする構造には、いくら事業者の負担が大きいとはいえ、今後に課題を残していると考えます。
水道料金の負担を緩和するため、自前で井戸を掘り地下水を利用する事業者が増えているとのこと、公共財である地下水の利用について規制することも検討が必要であると思います。
委員会では、消費税増税もあることから、低所得者への配慮が必要であるとともに、市民に丁寧に説明し理解を求めるよう強く要望し、やむを得ず、賛成しました。
老朽管の更新では、H25~H26年度に1年間に約10㎞、11億円ずつかける計画であること、H27~H28年度では約20億円かける見込みが示されました。しかし、毎年20億円かけても老朽管の更新を完了させるには、あと60年、何とH104年までかかるとの衝撃的な見込みも明らかに。
水道事業の維持更新にかかる費用を全て使用料に転嫁することは自ずと限界があります。H25年度で、50年後の水道事業を見据え『水道ビジョン』を見直す考えも示されました。この計画の策定・進捗には眼を光らせたいと思います。
★東京五輪招致支援を決議、交通基本法制定やTPPなどで意見書を可決
請願等に基づき、議会側から提案された7つの意見書案等を可決しました。
主なものは、「東京五輪の招致を支援する決議」、「地方公務員給与費に係る地方交付税の一方的な削減に関する意見書」、「交通基本法の早期制定と国の支援措置の拡充を求める意見書」、「環太平洋経済連協定(TPP)で慎重な交渉を求める意見書」、「北信地域の救命救急センターに、長野日赤に加え、新たに長野市民病院と厚生連篠ノ井総合病院を指定することを求める県知事あての意見書」などです。
地方交付税の削減に関する意見書、交通基本法の早期制定を求める意見書は、市民ネットとして取り組んだ意見書です。